【読書感想文】 中村文則/土の中の子供 【2008年刊行】
二〇〇五年に芥川龍之介賞を受賞した表題作と、短編である蜘蛛の声の二作品が収録された一冊。
芥川龍之介賞受賞が納得できるものであり、中村文則氏の小説として期待を裏切らない作品だった。文庫本自体は薄いが中身はとても濃いものだった。
とは言うものの、どういう感想文を書けばいいのかがわからない。
あらすじとしては、幼少期に凄惨な虐待を受けた経験のある私は虐待のせいで破滅的な生き方を求めるようになっていた。恐怖を受け続けたせいで恐怖を求めるようになっていた。……というまとめ方になるかな。
言葉では表すことのできないなにかが小説の中から滲み出ていて、それをがしがしと感じられれば記憶に残る一作となるだろう。
しかし、「だからなんやねん」と思ってしまうとまったく面白みがわからない一作となるだろう。
これはまさしく僕or私or俺のことが書かれている! と興奮できるかどうか。まあでも文学ってそういうものだよね。そこには明確な答えが書いてない場合が多く、自分なりの答えを導くようにして読むわけで。
中村文則氏の小説はこれで三作品読んだわけだが、これからも読み続けようと思った。
中村文則氏の小説にはそれだけの力がある。一生懸命文章を組み立ててこちら側になにかを伝えようとし続けている。中村文則氏の小説を追い続けよう。
短い感想文になったが、これ以上述べることがないだけで、感想文が長いからどうこう、短いからどうこうという話ではない。
様々な人に勧めたいと思わせる、大きな力をもった傑作。