読書感想ブログ

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【読書感想文】 高橋源一郎/ぼくらの民主主義なんだぜ 【2015年刊行】

 高橋源一郎氏が朝日新聞で月に一度連載している論壇時評の四年分をまとめた一冊。
 新書は今までほとんど読んだことがなかったので、読んでどういう感想が出てくるかと期待した。

 はっきり言うと僕は高橋源一郎氏の小説や書評、エッセイは大好きだが、政治関連の話は嫌いだった。
 というより、政治の話が嫌いだった。

 僕は政治も国もどうでもいいと思っていた。勝手に誰かがやって、勝手に盛り上げて、勝手に壊せばいい。日本にも興味がないし海外にも興味がない。だから旅行も嫌いで、修学旅行以来一度もしていない。

 選挙権を得て十年になるが、選挙に行ったのは一度きり。それも母の周りにうごめく宗教臭のする流れで、半ば強制的にそこへ投票させられた。
「そんな、信者を集めて選挙するって、政教分離に反するんじゃないの? これがOKなら意味ないじゃん」と思い、それから一度も行っていない。

 だから、どうでもいいというよりも、どうしようもないと思っていたし、今でもそう思っている。

 高橋源一郎氏も、反原発反戦争云々カンヌン……。どうでもいいわ、と。


【感想】
 序盤にいきなりがつんとやられた。
「息子の入学式に行ったが、国旗掲揚や国歌斉唱が当たり前なのに「?」と思った」と書いてあった。僕はそれを読んで、「日本人なら日本の国旗や国家に誇りを持つのが当たり前でしょう!」と思った。「ふざけんなよ」と思った。

 そう思いながら読んでいた。

 基本的に、源一郎氏が読み、聴き、感じたものから抜き出して一つにまとめているものが四十八回ある。当然短い中にすべてを抜き出すことは不可能なので、その都度URLや雑誌、本などを注釈にまとめている。

「当たり前のことは当たり前だろ」と思いながら読んでいたのに、「なぜ当たり前だと思っていたんだろう?」と考えが変わっていくのを感じた。
 簡単に言えば、僕の中で固まりきっていた常識が覆されていった。

 そう感じてから、頁をめくる手が止まらなくなった。

 とはいっても、すべての意見に賛成というわけではなく、一回ごとに、「なるほど、確かに」と思うこともあれば、「それは違うかな」と思うこともあった。

 読み終えた後に考えることがたくさんあるなと思った。そして、政治や国に興味を持った。かなりわずかな興味ではあるが、完全にゼロだった読む前と比べれば進歩したと思える。


【最後に】
 高橋源一郎氏は反日やら売国奴やら様々なことを言われているが、これを読めば、源一郎氏がいかに愛国心を持って問題提議をしているかがわかる。
 考え方の違う人を批判することも、あざ笑うことも、晒すこともしていない。ただ穏やかな文体でさりげなく問題定義をしている。