読書感想ブログ

感想文をバシバシガシガシ書きます。

読書感想文

【読書感想文】 西村賢太/夜更けの川に落葉は流れて 【2018年刊行】

三作からなる短編集。まったくもう、期待を裏切らない面白さだこと。 寿司乞食(小説新潮二〇十六年一月号掲載)【概要】 日雇い労働へ行く、一日分の給料をその日に使い果たす、次の日また日雇い労働へ行く―― 北町貫多二十二歳、そんな無計画な生活を立て直…

【読書感想文】 池波正太郎/剣客商売一 剣客商売 【2002年刊行】

年寄り向けのラノベといわれる時代小説。再読。が、内容はまったく覚えていなかった。 やっぱり文章とキャラクターが素晴らしい。 より簡潔に簡潔にシンプルに、無駄を省いて読みやすくし、それでいて想像力が膨らむ、文句のつけようがない文章。 数多の修羅…

【読書感想文】 高橋源一郎/ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた 【2017年刊行】

とても幸せな気持ちになれました。子どもたちが「くに」を作ろうとし、おとなたちがそれを支える。ファンタジーだけれど現実味もあり、よかったです。 終わり。 でいいと思うんだけれど、まぁもう少し書いてみようか。その前にまずこれを読んでほしい。ぼく…

【読書感想文】 中島らも/獏の食べのこし 【1993年刊行】

んもう。あまりに面白いから、立て続けに読んじゃったじゃないの。読んでいてアタシ思ったんだけど、このエッセイ読んでるあいだ、アタシずっとどこかにいたわ。わかりにくいかしら。ちゃんと説明するわね。 エッセイというか結局のところ文字を読んでるわけ…

【読書感想文】 吉行淳之介/原色の街・驟雨 【1966年刊行】

この本が初吉行淳之介でありまして、しかもこれまで第三の新人は一切読んだことがありませんで、期待と不安がないまぜの状態で読んだわけでやんすが、まずひとつ言えることはですね……文章旨すぎない? 文章のお手本を読んでいるかのよう。芥川龍之介賞受賞作…

【読書感想文】 中島らも/とほほのほ 【1995年刊行】

ここ数年間、中島らも氏のエッセイを読むのを禁じていた。理由は二つある。一つは「一冊読めば次々読んでしまうので、積ん読が減らなくなってしまう」であり、これはもう積ん読で部屋が大変なことになっている僕にとっては大問題だ。 そしてもう一つは、「十…

【読書感想文】 中原昌也/マリ&フィフィの虐殺ソングブック 【2000年刊行】

面白い! オチも展開もなもへったくれもクソもない、下品でナンセンスな即興演奏のような掌編たち。 こんな感じでいいんだよね。こんな感じの小説読んでくすりと笑って、さー明日も頑張るかと。 なんのこっちゃよくわからんけどなんだか笑える。疑問なんか抱…

【読書感想文】 東野圭吾/マスカレード・ホテル 【2011年刊行】

お…… お、 お―― 面白かった! 【概要】(Wikipedia引用) 東京都内で3件の予告殺人事件が起きた。事件現場に残された不可解な暗号から、3つの事件は連続殺人事件として捜査される。警視庁の捜査本部は、数列の暗号が次の犯行現場を予告するものであると解読…

【読書感想文】 高橋弘希/朝顔の日 【2015年刊行】

二冊目にして芥川龍之介賞候補作。デビュー作は戦争文学の指の骨、三冊目のスイミングススクールは母親の心の動きを描いて、二冊目は開戦前後の工場作業員である主人公と闘病中の嫁の切ない交流を描いた。 感想文で僕が何度も書いている「どうしようもなさ」…

【読書感想文】 茨木のり子/詩のこころを読む 【1979年刊行】

読むのにかなり時間がかかってしまった。というのも、そもそもやっぱり僕には詩が理解できないということであるし、茨木のり子氏の解説もさっぱり理解できないし、気に入った詩は何度も何度も繰り返して読んでしまうから。 この三点の理由。 詩はさっぱり理…

【読書感想文】 村上春樹/若い読者のための短編小説案内 【2004年刊行】

【概要】 村上春樹氏がアメリカの大学で日本文学について講義したもの。第三の新人の短編小説を生徒とともに読み込んで解説している。 【感想】 読み終わるのに結構時間がかかってしまった。そもそもとして、春樹氏も生徒もお題である短編小説を読み込んだ上…

【読書感想文】 佐伯一麦/ショート・サーキット 【2005年刊行】

【概要】 私小説家佐伯一麦氏の初期作品集。 年代別に並べると、木を接ぐが海燕1984年11月号掲載、端午が海燕1988年2月号掲載、ショート・サーキットが海燕1990年4月号掲載、古河が海燕1991年9月号掲載、木の一族が新潮1994年1月号掲載。 著者から読者へにあ…

【読書感想文】 羽田圭介/スクラップ・アンド・ビルド 【2015年刊行】【第153回芥川龍之介賞受賞作品】

高校生でデビューして以来何度も何度も芥川龍之介賞の候補になるも落選し続けた羽田圭介氏の、ようやくの芥川龍之介賞受賞作品。 羽田圭介氏の作品を読むのはこれで二作目なので、とても楽しみにしていた。【概要】 スクラップ。 主人公である健斗は、「早く…

【読書感想文】 村上春樹/やがて哀しき外国語 【1997年刊行】

著者がプリンストンに住んでいた二年半の間に感じたことを書いたエッセイ集。紀行文かと思ったら、エッセイだった。「村上春樹の小説は嫌いだけどエッセイは好き」だとか「~同文~翻訳は好き」みたいな話はよく目にするので、「村上春樹かぁ」と思う人に読…

【読書感想文】 川村元気/世界から猫が消えたなら 【2014年刊行】

昔やり取りのあった女性が勧めてくれたので、アマゾンで購入した。2014年に。積ん読棚から「ライトな感じだろうし、これ読むか」と手にとって読んだ。 一言で言うなら、作者の川村さん、今すぐ僕んち来いや。とりあえずどついたるから。 あかんでほんま。あ…

【読書感想文】 村田沙耶香/殺人出産 【2016年刊行】

コンビニ人間でがっつりとやられてしまったので、積んでいた本作をすぐに崩した。 「アホやなぁ」の一言に尽きる。当然褒め言葉。設定も登場人物もぶっ飛んでいるSFなので、なんだか筒井康隆氏の短編集を読んでいるような気がした。殺人出産 表題作なんです…

【読書感想文】 村上春樹/雨天炎天 【1991年刊行】

ギリシャとトルコの紀行文。海外旅行をしたことがないので、大変興味深く時間を忘れて読んだ。 当たり前の話だが、日本の常識が通用しないところが特に面白い。ギリシャでは皆が皆黴の生えたパンを食べて、信仰のために厳しい生活をしている。トルコではウォ…

【読書感想文】 村田沙耶香/コンビニ人間 【2016年刊行】

第155回芥川龍之介賞受賞作。 やたらと話題になっていたので気になっていた。ようやく読めた。読み始めて、気がついたら終わっていた。 感情も恋愛経験も就職経験もセックス経験もなにもない、主人公古倉。簡単に述べてしまえば、この人には「当たり前」とい…

【読書感想文】 高橋源一郎/正義の見方 【1994年刊行】

たっぷりなユーモアで時事ネタを斬る! 声に出して笑うところもあった。しかし、時事ネタが古すぎて知らなくてわからないところもあった。でも仕方ないよな、94年に出た本なんだもん。 あえて今の時代に読む必要性は……ない。でも源一郎氏ファンなら楽しめる…

【読書感想文】 カズオ・イシグロ/わたしを離さないで 【2008年刊行】

ノーベル文学賞を受賞されたのことで、以前百円で買って積んでいたのを崩した。 時間をかけて読んだが、正直時間を返して貰いたいと思った。金はね、どうせ百円だからいいけれど、この本に費やした時間を返してくれ、と。 なのでまともに感想文を書く気にな…

【読書感想文】 黒田晶/メイド イン ジャパン 【2001年刊行】【文藝賞受賞作品】

この本を読むのは、刊行された十五年前、高校のクラス・メイトで仲の良かった男が、「すごい小説を見つけたぞ」と興奮して貸してくれて読んで以来だった。 中高生の男というのは大体においてグロテスクなものが好きだ。ゴア描写が好きだ。それは映画でも漫画…

【読書感想文】 高橋源一郎/いざとなりゃ本ぐらい読むわよ 【1997年刊行】

高橋源一郎氏の書評が面白いのは当たり前の話なので、この本が面白いというのも当たり前の話で、面白いと思って積ん読棚から取り出して数日かけて読んでみたわけだけれど、面白いよね。 ちょっと興奮していたのか、左手のすぐ隣りに置いてあった灰皿に手が当…

【読書感想文】 内田樹・高橋源一郎/どんどん沈む日本を愛せますか? 【2012年刊行】

渋谷陽一氏責任編集の雑誌SIGHTでの対談をまとめた、二冊目の対談集。 この三人にはブレがないので、基本的には前回と同じ主張のまま、政治について対談している。そこから教育の話に飛んだり、石坂洋次郎氏の青い山脈の話になったり。。 震災から三ヶ月後に…

【読書感想文】 佐伯一麦/ア・ルース・ボーイ 【1994年刊行】

古い付き合いの文芸友だちから紹介されたものの、数年間積んだままだった。どういう作家なのかもわからないし、どういうジャンルなのかもわからない。うだうだと読むのを先送りにしていた。 そして昨日、なんとなく手にとって読んでみた。そして、時間を忘れ…

【読書感想文】 北尾トロ/裁判長!ここは懲役4年でどうすか 【2006年刊行】

裁判というものにまったく詳しくない著書が、手探りで始めた傍聴を記録したもの。 事件の大小にこだわらず手当たり次第で傍聴するというスタイルを貫き、そこにあるドラマを追い求める。 次第にコツを掴み傍聴仲間も増えていく様に、単純にわくわくさせられ…

【読書感想文】 内田樹・高橋源一郎/沈む日本を愛せますか? 【2014年刊行】

渋谷陽一氏が編集長を勤める個人誌SIGHTで連載された対談をまとめたもの。 一応、政治に関して素人の内田樹・高橋源一郎両氏が好きに対談するというスタイルだが、僕みたいな政治に無知な人間からすると、とても勉強になった一冊だった。 注釈も丁寧に当てら…

【読書感想文】 村上春樹/中国行きのスロウ・ボート 【1986年刊行】

僕が生まれた年にリリースされた、村上春樹氏にとって最初の短編集。 ひとつひとつ感想文を書こうと思ったが、別にいいんじゃないかって。読んでいるあいだ、村上春樹の文章にずっと浸っていられた。 山も落ちもないのに楽しく読めちゃうんだよな。いつもの…

【読書感想文】 村上春樹/走ることについて語るときに僕の語ること 【2010年刊行】

タイトルのそのまま、村上春樹氏が走ることについて語ったもの。2005年から2006年にかけて、なぜ走るか、どんな練習をしたか、どんな大会に出たか、そしてどう思ったかについて書かれている。 年齢を重ねるにつれ、以前は難なくクリアできていたタイムをオー…

【読書感想文】 高橋弘希/スイミングスクール 【2017年刊行】

指の骨に続き、高橋弘希氏の小説を読んだのはこれで二作目。外れないな、という印象。しかし文芸誌で読んだ時は、ですます調が受け付けなくて読むのをやめた記憶が。 物語の核心に近づくと逸らせて別の角度からの物語が始まり、帯に書いてある、「私と母の間…

【読書感想文】 元少年A/絶歌 【2015年刊行】

神戸連続児童殺傷事件、通称酒鬼薔薇聖斗事件を起こした元少年Aの手記。僕は兵庫県出身で、この事件が起きた時は十歳前後だった。事件が起きて犯人が捕まった後も学校も地域もかなりピリピリしていて、集団での登下校の際、父兄ががっちりとついていたことを…