読書感想ブログ

感想文をバシバシガシガシ書きます。

【読書感想文】 高橋源一郎/こんな日本でよかったら 【1996年刊行】

【概要】

 言わずと知れた高橋源一郎氏のコラム。外国人による日本人への素朴な疑問が収録されている。


【内容紹介】

 "Asahi Evening News" に連載されたコラム44篇を収録。氏が日本語で書いた原稿を編集者が翻訳し掲載したもの。単行本の後半半分はその英文版がそのまますべて収録されている。


【感想】

 まず、実質は単行本の半分しか読むところがないことに文句を述べたい。最初開いたとき英文がずらずらっと書かれていて、別の本と間違ったのかと思った。

 素朴な疑問とそれに対する氏の回答はとてもおもしろい。にやにやしてしまう。例に上げてみる。

 日本の大人はなぜ電車やバスで漫画を読むのか。
 日本では酒の席での失敗や失礼には寛容なようだが、なぜか。
 結婚式はキリスト教式、新年には神社を訪れ、葬式は仏式。日本人の宗教観はどうなっているのか。
 パチンコのような退屈なゲームになぜ熱中するのか。
 日本人はなぜカラオケが大好きなのか。
 日本でバレンタイン・デーが盛んなのはなぜか。
 街中で立ち小便をするのはなぜか。

 それに対して氏のときに皮肉を効かせた回答がとてもおもしろい。なので半分しか読むところがないのは許して差し上げよう。


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【読書感想文】 東野圭吾/怪しい人びと 【1998年刊行】

【概要】

 言わずと知れた東野圭吾氏の東野圭吾短編集シリーズ第二弾。

【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 俺は同僚の片岡のデートのために一晩部屋を貸してあげた。その後、そのことを片岡から聞いた2人の同僚、本田と中山にも部屋を貸すことになってしまう。3カ月後のある日、いつものように、車から部屋に戻ると、見知らぬ女が寝ていて…。(「寝ていた女」)
 あなたのそばにいる優しい人が、いつの間にか怪しい人びとに―。
 著者ならではの斬新なトリック満載の傑作推理集。

【感想】

 いや~、予想を裏切らない面白さ。実を言うと、前の犯人のいない殺人の夜を読んですぐに本屋に走って買ってきた。
 んでまあ飯を食うときも文庫本を片手にしていたのであっという間に読み終わったのだが、見事な出来だった。

 この中で一番を決めるなら、結婚報告だろう。
 大学時代の友人から手紙で結婚の報告があった。しかしその写真に写っているのは、友人ではなかった。なにが起こっているのか確かめるために金沢へ飛ぶ。

 このあらすじからもうわくわくする。あれやこれやの一大スペクタクルですよ。

 寝ていた女、灯台にて、コスタリカの雨は冷たいは次点。

 東野圭吾氏の短編ってこんなにおもしろいのに、「東野圭吾は短編はいまいちねえ」なんていうレビューが多いんだろう。次も東野圭吾氏の短編集読みます。


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【読書感想文】 東野圭吾/怪笑小説 【1998年刊行】

【概要】

 言わずと知れた東野圭吾氏の短編集で○笑小説シリーズの第一弾。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 年金暮らしの老女が芸能人の“おっかけ”にハマり、乏しい財産を使い果たしていく「おつかけバアさん」、
 “タヌキには超能力がある、UFOの正体は文福茶釜である”という説に命を賭ける男の「超たぬき理論」、
 周りの人間たちが人間以外の動物に見えてしまう中学生の悲劇「動物家族」…etc.
 ちょっとブラックで、怖くて、なんともおかしい人間たち! 多彩な味つけの傑作短篇集。


【感想】

 とても笑えた。どれも味があって好きだが、特に気に入ったのは教師たちの同窓会に生徒が招かれる逆転同窓会、空飛ぶUFOはたぬきだという超たぬき理論、手術によって若返った老人のあるジーサンに線香をの三つ。

 特にあるジーサンに線香をは、元ネタであるアルジャーノンに花束をを読んだ時のことを思い出しながら読んで、ラストで同じようにしんみりしてしまった。
 動物家族は落ちが読めた。逆転同窓会はなんか悲しくなってしまった。もし誘いがあっても同窓会には行かないでおこうと改めて決意させられた。

 昔、やたらとハマって読みまくった筒井康隆氏の短編集を彷彿とさせる、怪しい笑いがつまった短編集。東野圭吾の小説を読もうと思って開くとびっくりする。


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【読書感想文】 東野圭吾/犯人のいない殺人の夜 【1994年刊行】

【概要】 (Wikipedia引用)

 光文社から刊行された東野圭吾の短編推理小説
 1985年のデビュー期から1988年の間に『小説現代』『小説宝石』等で掲載された東野圭吾初期の7作品が収録された短編集。
 1990年7月に単行本として刊行され、1994年に文庫化。
 表題作「犯人のいない殺人の夜」は殺人のあった“夜”とその後の“今”の場面を交互に重ねて進んでいく構成となっている。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 親友が死んだ。枯れ葉のように校舎の屋上からひらひら落ちて。刑事たちが自殺の可能性を考えていることは俺にもわかった。しかし…。高校を舞台にした好短編「小さな故意の物語」。
 犯人がいないのに殺人があった。でも犯人はいる…。さまざまな欲望が交錯した一夜の殺人事件を描いた表題作。
 人間心理のドラマと、ミステリーの醍醐味を味わう傑作七編。


【感想】

 いやー面白いね。デビュー当時の短編集だということを今知った。どれも、どういう流れで悲劇が起こったのかというお話で。後味が悪いのもあって、読み終わったあと「うーーーーーむ」という気持ちになる。踊り子、エンドレス・ナイト、さよならコーチがとても気に入った。

 と、表題作の犯人のいない殺人の夜は読み応えたっぷり。読み終わったあと「のほーーーー」ってなった。
 どの短編も気持ちがよくて「ミステリを読んでるんだな~」と楽しくなるね。

 東野圭吾氏は短編より長編だなんて言われるけれど、短編もいいじゃん。文章は相変わらずすっきりしていて読みやすいし、文句ないよ。


 関係ないけど、なんか【概要】と【内容紹介】の意味がわからなくなってきた。


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【読書感想文】 北尾トロ/危ないお仕事! 【2006年刊行】

【概要】

 裁判傍聴記で有名な北尾トロ氏の仕事ルポ。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 超能力セミナー講師、タイの日本人カモリ屋、彼らは巧みな話術で人々をとりこにする。
 スレスレ主婦モデル、ダッチワイフを創る人形師、彼らは男たちの欲望に火を点け、お金に換える。
 警察マニアは無線を傍受し勝手に追跡、汁男優は“発射"に職業人のプライドをかける――。
 知られざる“仕事師"たちの実態が、今ここに明かされる。著者による、新聞拡張団・冷や汗体験記も収録。

【感想】

 おもしろかった。とはいうものの、実際に著者がその仕事に体験した話は臨場感があってとても面白いのだが、ただインタビューをしただけの話は物足りなさを感じた。

 新聞拡張団の体験記が一番おもしろかったかも。というのも僕も十代の頃健康食品の訪問販売を数ヶ月だけやっていたので、「ああわかるなこれ」というポイントが多かった。
 タイの日本人カモリ屋はとても恐ろしい。超能力セミナーは、なんだかみんな幸せそうでいいな。警察マニアは趣味を生きがいにしていて微笑ましい。家族の理解もあるし。
 万引きバスターと探偵は読み物としてとってもよかった。

 福満しげゆき氏の一頁漫画もとても気に入った。


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【読書感想文】 伊坂幸太郎/オーデュボンの祈り 【2000年刊行】

【概要】

 言わずと知れた伊坂幸太郎氏のデビュー作品で第5回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。
 江戸以来外界から遮断されている“荻島"には、妙な人間ばかりが住んでいた。
 嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。
 未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?


【感想】

 伊坂幸太郎氏の小説を一番最初に読んだのは、アヒルと鴨のコインロッカーだった。十年前かな、映画版を観て感動して原作も読んで感動した。それからちらちら読んでる。

 伊坂作品といえば、魅力的なキャラクター、心地よい会話、終盤の伏線回収。それはデビュー作のオーデュボンの祈りでも味わえる。
 優等生なんだよなぁ。よくできてるし面白いしヒットも飛ばして。終盤の伏線回収は本当に見事だった。さまざまな伏線がごそごそっと回収されて読んでいて口笛を吹きたくなった。やるねぇ~、ヒュウ。

 まあ口笛は吹けないんであれだが、クローズド・ミステリな味もあり、完璧な悪人も出てきてスリリングで先の見えない展開は読んでいてとても楽しかった。

 ……が、ひとつ言わせてもらうとすれば、中盤ちょっとだれるよね。ちょっと長い。とはいえこれでも文庫化の際に150頁ほど削除したようだ。
 伊坂作品はブック・オフでもよく見かけるし、手軽に入手できて読みやすい文章で楽しいエンタメなので文句なしだよね。


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【読書感想文】 村上春樹/約束された場所で underground 2 【2001年刊行】

【概要】

 永遠のノーベル文学賞候補村上春樹氏の、オウム真理教の信者と元信者八人へのインタビュー集。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 癒やされることを求めた彼らが、なぜ「サリン事件」という救いのない無差別殺人に行き着いたのか。
 彼らはなぜ現世を生きぬくことができなかったのか? どこに夢の地を求めようとしたのか?
 信者、元信者たちへの徹底的なインタビューと河合隼雄氏との対話によって、現代が抱える心の闇を明らかにするノンフィクション。

【感想】

 地下鉄サリン事件の被害者のインタビュー集であるアンダーグラウンドの対になるもので、オウム信者のインタビュー集なのだが、結局はまあアンダーグラウンドと同じパターン。
 人となりを紹介して、生い立ちからオウム真理教でなにをしていたかを述べて今なにをしているかで一人のインタビューが終わる。

 アンダーグラウンドと同じで最初は興味深く読んでいた。でも途中から、どれもこれも同じパターンだなと思い始めると退屈に感じてしまった。

 僕は根本的に宗教というものに対してよい感情を持っていないから、宗教的なことを言われると興ざめしてしまう。

 河合隼雄氏には興味が無いので、対談は読んでません。


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