読書感想ブログ

感想文をバシバシガシガシ書きます。

【読書感想文】 村上春樹/遠い太鼓 【1993年刊行】

【概要】

 村上春樹氏の紀行文。1986年の秋から1989年の秋までの3年間、主にイタリア・ギリシアなどヨーロッパに滞在した日々が綴られている。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 ある朝目が覚めて、ふと耳を澄ませると、何処か遠くから太鼓の音が聞こえてきたのだ。ずっと遠くの場所から、ずっと遠くの時間から、その太鼓の音は響いてきた。
 ―その音にさそわれて僕はギリシャ・イタリアへ長い旅に出る。
 1986年秋から1989年秋まで3年間をつづる新しいかたちの旅行記。


【感想】

 やっぱり紀行文はいいね。旅行した気分になって、読んでいてとても楽しい。

 でもさぁ……ちょっとボリュームありすぎ!
 雨天炎天や辺境・近境ぐらいのボリュームにしてほしかった。たとえば1986年、1987年、1989年で分冊するとかさ。

 三分の一ほど読んで数ヶ月放置して、最初から読み直したわけだが、何ヶ月かかっただろうか。アンダーグラウンドもそうだけれど、もうわかった! お腹いっぱいだ! という気になる。
 やっぱり分冊してほしいな。

 内容に関しては特に述べるものもないだろう。春樹氏の紀行文だ。


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【読書感想文】 村上春樹/騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編 【2017年刊行】

【概要】

 言わずと知れた村上春樹氏の七年ぶりの長編小説。


【内容紹介】 (新潮社HP引用)

 その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入り口近くの、山の上に住んでいた。
 夏には谷の奥の方でひっきりなしに雨が降ったが、谷の外側はだいたい晴れていた……。
 それは孤独で静謐な日々であるはずだった。騎士団長が顕(あらわ)れるまでは。


【感想】

 おいおいおいおい、どうした村上春樹!?
 こんな爽やかでハッピーな最期っていったいどうしたんだ?

 主人公が云々考えているときは退屈だが、免色が出てくるとアクセル踏みっぱなしでとてもおもしろい。
 秋川まりえはねじまき鳥クロニクルの笠原メイほどの魅力はないなあと思いながら読んでいたが、終盤の展開で自分の中でとても可愛くなった。

 読んでいる間にいろいろと思ったことはあったんだが、時間をかけてのんびり読んでいるとほとんど忘れてしまった。三箇所ほど読むに耐えなくてスキップした部分はあったが、まあ基本はいつもの春樹さん。

 ユズに関しては、ジュリーのカサブランカ・ダンディばりにひとつふたつ張り倒せよと思っていたが、まあこういう決着でよかったのかなと。

 氏の小説では初めての試みとなるイベントがいくつかあったが、そこには驚かされた。まあいろいろと心境の変化があったんだろうな。

 なんだかんだと言っても、結局のところとてもおもしろかった。ほとんどのことについてきっちりと決着をつけた上で終わらせているし。文句は上述した読むに耐えなくてスキップした部分をどうにかしてほしかった。
 まあそれの意図するところは理解はできるが、それでもつらかった。


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【読書感想文】 奥田英朗/町長選挙 【2009年刊行】

【概要】

 直木三十五賞作家奥田英朗氏の精神科医・伊良部シリーズの第三弾。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 町営の診療所しかない都下の離れ小島に赴任することになった、トンデモ精神科医の伊良部。そこは住民の勢力を二分する町長選挙の真っ最中で、なんとか伊良部を自陣営に取り込もうとする住民たちの攻勢に、さすがの伊良部も圧倒されて……なんと引きこもりに!?
 泣く子も黙る伊良部の暴走が止まらない、絶好調シリーズ第3弾。


【感想】

 実在の人物をモデルにした三作と離島での選挙の話の四話。
 オーナーはナベツネ、アンポンマンはホリエモン、カリスマ家業は黒木瞳

 最期はハッピー・エンドで終わるし展開も面白いのでエンターテイメントど直球なわけだが、まあもうネタ切れかなと。つまらないわけではない。面白い。一日で読み終えた。伊良部とマユミちゃんだけでキャラクターが立ちまくってるのに、そこに一癖も二癖もある患者が物語を引っ張って読むのが止まらない。

「ええ話やな~」と暖かい気持ちになる結末もいいね。

 しかし、前作や前々作とは毛色が違っている。それを期待すると肩透かしを食らうかも。


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【読書感想文】 長江俊和/出版禁止 【2014年刊行】

【概要】

 言わずと知れた放送禁止シリーズの長江俊和監督のフェイク・ドキュメンタリー小説第一弾。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 著者・長江俊和が手にしたのは、いわくつきの原稿だった。題名は「カミュの刺客」、執筆者はライターの若橋呉成。
 内容は、有名なドキュメンタリー作家と心中し、生き残った新藤七緒への独占インタビューだった。
 死の匂いが立ちこめる山荘、心中のすべてを記録したビデオ。不倫の果ての悲劇なのか。なぜ女だけが生還したのか。
 息を呑む展開、恐るべきどんでん返し。異形の傑作ミステリー。


【感想】

 読ませるねぇ。ルポルタージュという設定のカミュの刺客が完全に小説なのはまあ置いておいて、当事者以外の関係者にもインタビューをし、徐々に真実に近づいていく様は読んでいてとてもスリリングで先が気になって仕方がない。

 そういう設定を把握した上で読んでいたのだが、若橋と七緒の間にべつの感情が現れ始めたときにはもうそういうのはどうでもよくて、二人はいったいどうなってしまうのかということが気になって気になって、読むのがかったるいぐらい頁をめくり続けていた。

 でもなー。終盤の展開、息は呑むけどさぁ、どんでん返し? すごーく強引じゃない? しかもよくわかんなかったから、これから解説読むわ。あと今月出版禁止2出るってね。とりあえず買って読むかな。掲載禁止も気になるね。

 追記。性行為のあとのこの二行は上手いなと思った。

 思わず、右手を鼻先に寄せる。
 指先に七緒の残り香が、かすかに漂っていた



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【読書感想文】 岩井志麻子/現代百物語 嘘実 【2010年刊行】

【概要】

 言わずと知れたホラー作家岩井志麻子氏のそこはかとなく不安な話をまとめた現代百物語シリーズの第二弾。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 さらりと驚くような都市伝説を語る女。芸能界との繋がりを自慢する主婦。人を殺しかけた体験を語る男。雑誌に殺人事件をタレこむ女。凄絶な不良少女と友達だと吹聴するお嬢様。過去をなかったものにする風俗嬢。だますつもりのない簡単なホラを吹く女…。
 人が嘘をつく背景には、どんな心の闇があるのか。著者の身の回りに実在する話を元に、現代人の虚実を暴き出す、書き下ろし百物語、大好評シリーズ第2弾。


【感想】

 タイトルにもあるように、今回のテーマは嘘。読み終えた瞬間、すーって息を吸い込んでははははと乾いた笑いが出てくる。不安を通り越して怖い。
 一応作者はすべて実話だと言っているのでそれを信じて恐怖を楽しむのがいいね。
 フェイクだとか作り物だとか、そういう視点でホラーを見ても仕方がない。


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【読書感想文】 加藤陽子/それでも、日本人は「戦争」を選んだ 【2016年刊行】

【概要】

 歴史学者加藤陽子氏の講義をまとめたもの。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 膨大な犠牲と反省を重ねながら、明治以来、四つの対外戦争を戦った日本。
 指導者、軍人、官僚、そして一般市民はそれぞれに国家の未来を思いなお参戦やむなしの判断を下した。その論理を支えたものは何だったのか。
 鋭い質疑応答と縦横無尽に繰り出す史料が行き交う中高生への5日間の集中講義を通して、過去の戦争を現実の緊張感のなかで生き、考える日本近現代史小林秀雄賞受賞。


【感想】

 日清戦争から順に、日本の戦争の歩みが学べるらしいので買ってみたわけだが……。

 期待しすぎたのだろうか。とてもつまらない。ウィキペディアをまとめただけというか、教科書を読んでいるというか、とにかくつまらない。結局なにが言いたいのかわからないし。
 読んでもらおうという気がまったく感じられない。中学や高校の時のつまらない歴史の授業を思い出した。

 途中から飛ばし飛ばしで読んで、あっもういいやと思って読むのをやめた。


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【読書感想文】 東野圭吾/手紙 【2006年刊行】

【概要】 (Wikipedia引用)

 毎日新聞」日曜版に2001年7月1日から2002年10月27日まで連載され、2003年3月1日に毎日新聞社から単行本が刊行された。第129回直木賞候補作である。映画化に合わせて、2006年10月10日に文春文庫版が刊行された。文庫版は1ヶ月で100万部以上を売り上げ、同社最速のミリオンセラーとなり、2007年1月時点で140万部を超えている。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く……。
 しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる苛酷な現実。
 人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。犯罪加害者の家族を真正面から描き切り、感動を呼んだ不朽の名作。


【感想】

 ネタバレあります。

 途中までは一気読みだった。直貴は進学も夢も恋愛も就職も、ことあるごとに兄の件が理由で理不尽な仕打ちを受ける。刑務所にいてなにも知らない兄は脳天気な手紙を送り続ける。その対比がとてもいいね。
 直貴も、自分のせいで兄がという負い目があるんだよね。諦めざるを得ない結果になるわけだが、相手が悪人というわけではない。たしかにまあ自分でもそうするわなあと思わせる。
 しかし朝美の自分に酔っているところがとても人間臭くてよかったな。直貴が大学へ行くきっかけをつくった倉田のキャラもいいね。
 続きが気になって気になって、正直二回だけ先を見てしまった。もう文章を読むのもかったるいぐらい気になって気になって。

 ……が……。

 五章と終章は「はぁ?」だったな。顔もよくて声もよい直貴に一方的に惚れる都合のいい女由美子。大きな会社の社長が二回も直貴に会って助言めいたことを言う。終盤の流れ。兄貴に手紙を出すってのはいいけどよお、ちょっと都合よすぎないか。朝美と倉田、あとはまあ寺尾以外、そのために出てきたキャラクターで作者に都合よく言わされているだけなのがビシビシ伝わってくるよ。

 四章までは全然感じずにひたすら読んでいたんだけれど、五章と終章っていうか社長と終盤の展開は駄目だわ。興ざめ。最後の手紙がいい味出してただけに残念だなあ。でもそれだけ、四章までは本当に面白くてハマりにハマったというわけで、ちょっと落ちに期待をしすぎていたのかなというわけです。

 仕事仲間の、直貴に飯を誘うけれど割り勘にはしないやつが一番好きかなぁ。


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