【読書感想文】 村上春樹/TVピープル 【1993年刊行】
外れなしの短編集だった。
表題作のTVピープルは、突然部屋にTVピープルがやってきて部屋に映らないテレビを置いていくというもの。
不思議さ爆発。
飛行機 ――あるいは彼はいかにして詩を読むようにひとりごとを言ったかは、よく泣く人妻との情事を描いたもの。
我らの時代のフォークロア ――高度資本主義正史は、数十年ぶりに会った同級生が当時付き合っていた女の子との話をする。完璧な男と完璧な女の切ない話。
人によってはかなり共感できるのではないだろうか。実際僕はかなり共感できた。
加納クレタは、これまで散々レイプされてきたクレタと、人の中にある水音を聴く姉のマルタの話。
ゾンビは、マイケル・ジャクソンのスリラーのPVのお話。結末は笑えた。
眠りは、この短編集で一番長い話。一切眠れなくなった女が深夜にこれまでの人生や結婚生活のことを考えたり、プールに行ったりアンナ・カレーニナを何度も読んだりする話。
ひたすら女がさまざまなことを考えるだけの話なのに、読むのが止まらなくなっていまった。
基本的にシュール。なにかあったとしても基本的に答えは提示されない。作中にヒントのようなかけらがいくつかあるが、それはどうでもいい。
答えがなければ駄目だという人には合わないだろう。
しかしそもそもそういう人は村上春樹作品を読まないだろうな。