読書感想ブログ

感想文をバシバシガシガシ書きます。

【読書感想文】 内田樹・高橋源一郎/沈む日本を愛せますか? 【2014年刊行】

 渋谷陽一氏が編集長を勤める個人誌SIGHTで連載された対談をまとめたもの。

 一応、政治に関して素人の内田樹高橋源一郎両氏が好きに対談するというスタイルだが、僕みたいな政治に無知な人間からすると、とても勉強になった一冊だった。

 注釈も丁寧に当てられているので、わからないことがない状態で対談が進む。その対談がまた面白いんだ。笑いつつ、なるほどと思いつつ、一気に読んでしまった。

 続編も本棚にあるので、のんびりと読もうと思う。

【読書感想文】 村上春樹/中国行きのスロウ・ボート 【1986年刊行】

 僕が生まれた年にリリースされた、村上春樹氏にとって最初の短編集。

 ひとつひとつ感想文を書こうと思ったが、別にいいんじゃないかって。読んでいるあいだ、村上春樹の文章にずっと浸っていられた。

 山も落ちもないのに楽しく読めちゃうんだよな。いつもの春樹的アイテムや、今後の長編で出てくるアイテムもあったりして。

 しかし最後のシドニーのグリーン・ストリートは、読んでいてなんだかブコウスキー氏のパルプを思い出した。この短編集の中で一番好きかも。日常に非日常が侵入してそのまま進んでゆく。展開がまったく読めなかった。

【読書感想文】 高橋源一郎/退屈な読書 【2001年刊行】

 書評の連載をまとめたもの。興味のあるものは手当たり次第といった風に、様々な本を読んで書評をつけている。

 活字だけでなく、漫画や映画、写真集なども。おそらく源一郎氏の中で、「これは文学だ」と思ったなら、活字じゃなくてもなんでもいいのだろう。

 一つのものに対しいろいろな角度からそれを見て、思ったことが書いてある。知らないものがほとんどだったが、興味がわいてタイトルと作者名をメモったものも結構ある。

 なるほどなぁと感心したり笑ったりして楽しんで読めた。ぜんぜん、退屈な読書じゃなかった。

 源一郎氏の書評本はまだ本棚に結構あるので、ちびちびと読んでいきたい。とても面白かった。

【海外ドラマ感想文】 GOTHAM/ゴッサム シーズン2

 ようやくNetflixeでシーズン2が配信された。かなり待った。

第一話 大義のために
 様々な話が一話の中で始まり、終わった。バーバラが怖い。この後いったいどうなるのだろうか。

第二話 悪の侵食
 滅茶苦茶盛り上がってきた。まさかまさかの展開。そしてバットマンには欠かせない二人のキャラクターがメインとなってきた。

第三話 最後の笑い
 チャリティー会場にジェロームが乗り込み、ピンチに。そして物語は二転三転する。

第四話 アルファ部隊
 ゴッサム市警のボスが正義感溢れる男に代わり、ジムに部下がつく。ペンギンは仕方なく市長候補を……。

第五話 粛清
 命じられるまま、ペンギンは放火魔兄弟を使ってウェイン産業が持つ建物を放火していく。ペンギンとギャラバンの戦いが楽しい。

第六話 運命の炎
 今まで抑えつけられ、つけていたものが外れちゃったんだな。ペンギンの方は着々と進んでいる。

第七話 覚醒
 ペンギンの怒りが止まらないね。ジムはようやっと、新市長のことがわかってきた。ブルースとセリーナはどうなる?

第八話 ブルースの決断
 ブルースは自分の両親を殺した犯人の情報と引き換えにウェイン産業を売ろうとする。ジムはバーバラと決着をつける。ラストで思わぬ展開。ところでブルースとシルバーはどうなるんだ?

第九話 黒い友情
 よりストーリーが重たくなってきた。ジムの中に潜むモンスター、ウェイン産業の闇を潰そうとするブルース、まだまだ企むギャラバン。

第十話 ゴッサムの息子
 新たな組織、教団が出てきた。オカルティックな流れになってきた。そしてメインのほうもまたまたややこしくなって、続きが気になる。ブルースがどんどん強く格好よくなっていっている。

第十一話 正義と使命
 ハラハラ・ドキドキな展開だった。ギャラバン関係はとりあえず終わり、次はDr.ストレンジというキャラクターがメインになるのかな。そしてラストにあのヴィランが。

第十二話 ミスター・フリーズ
 愛する妻を冷凍保存するため研究を続ける男。なんらかの目的のために暗躍するストレンジ。ジムとペンギンはどう繋がるのか。

第十三話 愛の結末
 妻のために人々を凍らし続けるフリーズ、止めようとするジム、フリーズを我が物にしようとするストレンジ、精神的に苦痛を与え実験されるペンギン。シーズン3でどうなっちゃうんだろう。

第十四話 マローンという男
 ブルースはついに両親を殺した男にたどり着いた。そして、あることに気づき、行動する。ペンギンは実験を完了し、ニグマはより恐ろしくなる。

第十五話 ニグマの罠
 タイトル通り、ニグマの罠にゴードンが引っかかって逮捕されてしまう。そしてThe O.C.に出てきたメリッサの母役のミンディ・クラークが出てきた。主人公も同じだし。

第十六話 偽りの家族
 刑務所に入れられて命の危険がつきまとうゴードンと、善人になり家族を得たペンギンの話が交互に。まさかの展開に驚いた。ペンギンはどうなる?


 ゴードンとペンギンの話は無事に解決。ブルースはキャットと別れ、父が残したパソコンを調べる……。ラストに出てきた人がこれからどう絡んでくるか、見ものだな。

第十八話 パインウッド
 なんか一気に話が進んだな。ようやっとストレンジ博士と繋がってきたし。頑張れブルース。でもラスト、これやっちゃったらなんでもありになるじゃないか……。

第十九話 アズラエル
 あの男が完全復活した。ジム、ブルース、ペンギン、腕切り落とされたペンギンの元部下、様々な思惑の中クライマックスへ。

第二十話 放たれた悪魔
 うーむ、いろいろと駒が揃ってきたな。ここへ来てこの盛り上がりようはすごい。

第二十一話 救出作戦
 ちょっとなんでもありになってきた。ストレンジが強すぎる。ジムたちがなにをやってもそれをわかっていて、為す術がない。ラストでとんでもないことになって。

第二十二話 地下に眠る怪物 [シーズン終わり]
 シーズン2完結。まだまだ続きそうだ。とりあえず落ち着いて。早くシーズン3が観たい。

【映画感想文】 庵野秀明・樋口真嗣/シン・ゴジラ 【2016年公開】

 早く観たかった一本。観ている途中に、「この映画はとんでもないぞ」とある意味で恐怖を覚えた。

【良い点】

 ・たくさんの人が出てくるが、役職と名前がテロップで出てくる点。物語の展開がかなり早いので、そこですぐにキャラクターの設定を頭に入れられる。
 ・特撮が嘘くさくなく、リアリティが出ている。
 ・これまでのゴジラとは違い、人間目線でゴジラの恐怖を描いている。
 ・日本が格好いい。


 特筆すべき点は、日本政府が格好いいというところだろう。アメリカや他国に頼らず、あくまでも自国でゴジラを対処しようとする姿勢、日本人としての誇りを感じられる。しかしそれも説教臭くなく、単純にヒーロー物として日本が格好良く描かれている。

 そして、2011年3月11日の地震ゴジラの災害が重なった。日本はあの時タコ殴りにされ辛酸を嘗めさせられたが、そんなことでは日本人は負けないぞという力強さを感じた。日本はまだまだやれる。そういう熱い思いが詰め込まれた熱い映画だった。

 観ない理由はない。

【読書感想文】 村上春樹/走ることについて語るときに僕の語ること 【2010年刊行】

 タイトルのそのまま、村上春樹氏が走ることについて語ったもの。2005年から2006年にかけて、なぜ走るか、どんな練習をしたか、どんな大会に出たか、そしてどう思ったかについて書かれている。

 年齢を重ねるにつれ、以前は難なくクリアできていたタイムをオーバーするようになってしまう。練習をいくらしても、体調にどれだけ気を使っても、老いには勝てないという事実に打ちのめされてしまう。
 というような悲しくて切ない内容から始まる。

 作者も書いている通り、走ることの素晴らしさを語ってランナーを増やしたいというような思いは感じられない。ただ、作者本人が走ることについて語っているだけ。それなのにとても面白い。

 初めてのフル・マラソンの部分や100キロ・マラソンの部分なんて、読む手が止まらなかった。この辛い中走りきれるのか? とハラハラ・ドキドキしながら読んだ。

 包み隠さず正直に全てを述べているから、楽しく読めるのだろう。駄目で情けない部分も存分に出す。いい格好はしない。でもストイック。ありのままの春樹氏が、ありのままの走りを書いた。そしてストイック。ただそれだけ。ただそれだけなのに、本当に面白かった。

 正直なところ、僕も体重が落ちて足の爆弾が解除されたら、定期的に走ってみようと思った。僕自身も春樹氏と同じく、団体でやるより個人でやるほうがのめり込める質だから、近所を黙々と走りたい。

【読書感想文】 高橋弘希/スイミングスクール 【2017年刊行】

 指の骨に続き、高橋弘希氏の小説を読んだのはこれで二作目。外れないな、という印象。しかし文芸誌で読んだ時は、ですます調が受け付けなくて読むのをやめた記憶が。

 物語の核心に近づくと逸らせて別の角度からの物語が始まり、帯に書いてある、「私と母の間には、何があったのか――。」という謎が一向に解けない。だから気になって頁をめくる手が止まらないし、文章も描写も物語もすべて緻密に作られているのですぐに読み終わってしまった。

 指の骨もそうだったが、読んでいてとても心地がいい。主人公の娘であるひなたちゃんがとても可愛い。戦争を体験していないのにあれだけの戦争小説を描いて、結婚して娘がいるわけでもないのにこんなに上手い母と娘の関係性を描いて、高橋弘希氏は一体なんなんだと。どれだけの作家なんだと。腹が立つぐらい上手いわと。ふざけんじゃないよと。

 読み手の想像力が爆発するぐらい、頭のなかに描写が浮かび上がる。それがあって、全体的に漂う切なさに胸が締め付けられる。特に終盤にあるカセットテープを聴くところ。父親に向けた、インタビュー形式のもの。もうこの無邪気な子ども時代には戻れないのだな、母も亡くなって娘が成長して、同じようなことが繰り返されていくのだな、と思うと、泣きたいくらいに切なくて悲しくなる。

「お前なんて堕ろすつもりだった」と母から言われてショックを受けたのに、娘の頬を思い切りはたいてしまう。そういうものか。


 短編である短冊流しは、自分の不貞によって夫婦生活が破綻し、下の子供だけ嫁が引き取っていったシングル・ファーザーの話。その娘が突然泡を吹いて気を失い、それからずっと病室で眠り続けている。こちらからはどうしようもない状態に陥った娘をただ見守ることしかできない。つらいね。
 読んでいる途中、中村文則氏の小説を読んでいるような気がした。文体が似ているのだろうか。

 最新作である日曜日の人々を購入したので、読むのが楽しみだ。

 芥川龍之介賞には毎回候補になるだけで受賞しないので、そろそろ受賞してもらいたいなと思った。