読書感想ブログ

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【読書感想文】 野坂昭如/アメリカひじき・火垂るの墓 【1968年刊行】

【概要】

 言わずと知れた野坂昭如氏の第58回直木三十五賞受賞作を収録した短編集。
 火垂るの墓アメリカひじき、焼土層、死児を育てる、ラ・クンパルシータ、プアボーイの六編からなり、火垂るの墓アメリカひじきが受賞した。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 昭和20年9月21日、神戸・三宮駅構内で浮浪児の清太が死んだ。虱だらけの腹巻きの中にあったドロップの缶。その缶を駅員が暗がりに投げると、栄養失調で死んだ四歳の妹、節子の白い骨がころげ、蛍があわただしくとびかった――
 浮浪児兄妹の餓死までを独自の文体で印象深く描いた『火垂るの墓』、そして『アメリカひじき』の直木賞受賞の二作をはじめ、著者の作家的原点を示す6編。


【感想】

 火垂るの墓は、言わずもがなですよねぇ。アニメ映画は何度ももう観ないと思いつつも何度も観てしまっていたのであらすじは知っていたが、文章で読むとまた違った感じがあっていいね。小母さんの言ってることももっともだという意見はよく耳にするが、アニメ映画も原作も、あたしゃあ全然そんなこと思わない。読んでてつらいよ。でも数十年前にはこれが日常だったのよね。

 アメリカひじきは一転、笑えて笑えて仕方がない。終戦直後ってこういう感じだったのねえと。パラシュートで食料品が落ちてきた。新型の爆弾や言うて驚いて、食料が入ってるとわかったら我先に、紅茶の葉なんて見たことないから茹でてみたり焼いてみたり、それがアメリカのひじきや言うてしがんでみるけどくっそ不味い。配給で七日分のチューインガム、噛んでも噛んでも腹は膨れん、くっちゃくっちゃ噛んで吐き捨てて。ワイハでお世話んなったアメリカ人の老夫婦が来るからもてなしやって嫁はんが張り切るけどあの白豚どもそんなもてなしも関係あらへん、主人公がパンパン世話したり酒やのなんやのしてもなんにも思っとらん。しまいめには無視しょおる。アメリカへのあこがれやコンプレックスやついこないだまでは鬼畜米英や言うてたのにアメリカさんアメリカさん言い出したとまどいとかが流れるように縦横無尽に描かれてて、ドトールで笑いこらえるのに苦労したわ。

 焼土層は、養子に出された主人公が産みのおかん死んだ言われて神戸に戻るわけやけど、最後の二頁は読むのもつらいというか切ないというか、後悔。そんなんやったらもっとちゃんとしといたらよかったっていう。

 死児を育てるは、自分の子供殺してもうた嫁はんが、過去に……いやあこれは言うたらあかんか。

 ラ・クンパルシータ、餓死恐怖症や言うて兎に角もう飯を食いたい、おかんの着物黙って換金して米を食べる。それがどんどんエスカレートしよって、少年院や。牛みたいに食うたもんを反芻してまたくちゃくちゃ言わす、つまりそれってゲロなんよなあと思ったらなんや気持ち悪う感じて、でも普通に飯を食うことがでけへんっていうことは今生きとる僕にはやっぱり本質では理解できてなくて、ご飯はなにもつけなくてもそれだけで甘くて旨くて涙が出るって、なんやほんまに僕らは恵まれとるんやな思て、晩飯にご飯食わないダイエットなんやしとる場合とちゃうなと思うけど、まあそれはちょっと許してほしい。

 プアボーイ、「淫売婦の子オが学校へ行くなんか無理やわ」って悲しい一言やなあ。「住所は」「不定や」で笑ってもうたやないけ。


 前編通して飯を食うシーンが印象的。母親の形見の着物も飯に換えて。あと、普通に人死ぬね。そういう時代だからあれだけれど、別に感慨深くもなくもったいつけるわけでもなく、ただ一言「死んだ」って。無茶苦茶な話だよね。
 まあこのぐらいの感想で許してください。


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