読書感想ブログ

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【読書感想文】 赤染晶子/乙女の密告 【2010年刊行】【第143回芥川龍之介賞受賞作】

【概要】(Wikipedia引用)
 京都にある外国語大学では、皆熱心に学業に取り組んでいる。2009年11月のある日、風変わりなバッハマン教授が、他の授業に乱入し、1月に行われるドイツ語スピーチコンテストの暗唱課題を伝える。「『ヘト アハテルハイス』(『アンネの日記』の原題、原文はオランダ語)の中でアンネにとって一番重要な日はいつですか?」という教授の質問に、みか子は1944年4月15日と答える。その日は、アンネがペーターとファーストキスをした日だった。教授の答えは1944年4月9日。それは隠れ家に警察が迫るが”命拾いし”アンネがユダヤ人であることを自覚する日だった。そしてその日の日記が、課題テクストだった。

 翌日の教授の授業では、皆必死に覚えてきたものの、誰一人として完璧に暗唱できず教授の怒りを買う。教授は”乙女達”をそれぞれの嗜好の違いで「すみれ組」「黒ばら組」に分けていた。黒ばら組のリーダー麗子主導で、早朝と夜間の自主トレが始まる。みか子はすみれ組だが、優等生だが独特の雰囲気を持つ”麗子様”に憧れていた。自主トレの中で、麗子はスピーチの醍醐味として、忘れた個所が自分にとって大切な言葉だと語る。

 やがて、麗子がバッハマン教授と「乙女らしからぬ事をした」という噂が流れる。乙女達の間であっという間に広まり、麗子は黒ばら組のリーダーを降ろされる。新リーダーは貴代だった。麗子の自主トレにはみか子しか来なくなってしまった。みか子は黒い噂を確かめようと、話声がする教授の部屋を訪れる。そこには、アンゲリカ人形に話しかける教授がいた。教授から暗唱するよう言われ、やはり同じ所で詰まってしまう。教授はみか子に繰り返し問う「アンネは本当に命拾いしましたか」と。みか子が部屋を出ると、どうやら麗子がいたようである。


【感想】
 読点をほとんど使わない短い文章が、スピード感と勢いがあってとてもよろしい。その勢いのまま一気に読んでしまった。だから読み終えてすぐに思ったのは、「面白いが、勢いだけかもしれん」だった。が、それだけで芥川龍之介賞を受賞するわけがなく、やはりよくできている。

 概要にもある通り、「みか子がバッハマン教授と乙女らしからぬことをした瞬間を密告した誰か」と「アンネ・フランクの隠れ家を密告した誰か」がうまい具合に重なっていい味を出している。それは一体誰なのか? が気になって読むのが止まらない。実際に夜読み始めて寝る時間をオーバーしてしまい、翌朝四度寝して遅刻ギリギリに職場についた。


【まとめ】
 とても面白かったため、作者が故人だというのがとても悔やまれる。あと二冊単行本を出しているが、残念ながら絶版でかつ中古の値段が高い。それも是非読んでみたい。時間を忘れて読めた、とても質の高い一冊だった。


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