【読書感想文】石田衣良/池袋ウエストゲートパークⅩⅢ 裏切りのホワイトカード 【2017年刊行】
新刊が待ち遠しい一作をようやく読んだ。
四編からなる短編集。
展開がスムースすぎて物足りない感はあったが、文章・構成共に素晴らしく、とても楽しんで読めた。
滝野川炎上ドライバー
礼儀正しく、いい人の見本のような配送員ジュンジの息子トオルが、真冬にも関わらずTシャツ姿で真島フルーツ店の前で立っていた。マコトと母がトオルを介抱すると、腕に縦三本のミミズ腫れがあるのを発見する。虐待を疑う母は、マコトに調べるよう指示する。
簡潔で気持ちのいい文章は相変わらず。でもなんだか展開が駆け足のような気がした。炎上のところや虐待のところなんてもう少しじっくり描いてもよかったのでは、と思った。
上池袋ドラッグマザー
ゲリラ豪雨に襲われた池袋。フルーツ店の前でずぶ濡れになった女子中学生マイを発見する。マイは二週間昼食を我慢して得た四千円で、マコトに仕事を依頼する。「母親が別人になってしまったので調べて欲しい」と。
女を薬漬けにして金を得る男を成敗する話。久しぶりに吉岡が出てきた。今回もなんだか展開が駆け足のような気がした。
東池袋スピリチュアル
デニーズで生活している、スキンヘッドの頭にインプラントを埋め込んだ凄腕ハッカー、ゼロワンから呼び出しを食らう。夢で見たものを調査して欲しいと。
僕が数年住んでいた大塚駅が出てきたのがなんだか嬉しかった。村上春樹も小ネタとして出てくるのでにやりとした。霊感商法を批判しつつ、本物を出してくるのが上手い。タカシも出てきます。
裏切りのホワイトカード
店番をしていたマコトの元に、タカシから電話がある。「誰にでもできる仕事で、ギャラは十万。二千人から三千人の人員を募集するという話がきたのでそれを調べろ」と。
同時期に、柔道かレスリングの経験がある屈強なスーツ男に呼び出され、年間売上が一兆六千億を超える製薬会社の理事ミオンと会う。「家から出てブラックボードという裏サイトを運営している弟を探して欲しい」と。
タイトル作。シンジとミチカの話は感動したし、二つの話がラストへ向けて収束していく流れがとても楽しかった。池袋シリーズのよさが存分に出た一作だった。
【読書感想文】 よしもとばなな/キッチン 【2002年刊行】
言わずと知れた、よしもとばななのデビュー作にしてベスト・セラー小説。よしもとばななの小説は以前読んだアムリタが個人的にかなり好きだったので、デビュー作で評価がとてつもなく高いキッチンを読むのが楽しみだった。
そして、読んだ感想。
……うぅむ……。
主人公である桜井みかげに嫌悪感を懐きながら読んでいた。「私って、不幸だわぁ~、それを聞いて欲しいわぁ~」感がすごく苛々する。一緒に住むことになった雄一との関係性も意味がわからないし、「そういうあたしたちの関係」というのが吐き気を催すほどに気持ちが悪い。
「◯◯なのだ。」みたいな会話も滑っていて寒い。
文章もいちいち引っかかるところが多いんだよなぁ。
亡くなった人たちとの思い出が挿入されるわけだけれど、読み手からすればそんな思い出知らないし過去に描かれたわけでもないし、「あっ、そう」としか思えない。
んで、満月――キッチン2になるとより一層みかげが気持ち悪くなっていく。そりゃぁ、雄一のことが好きな女からすれば、みかげは目の上のたんこぶだよな。「雄一君をたぶらかさないで!」と必死にみかげに抗議しても、「自分の面倒は、自分で見るものです」とか言っちゃって。
その後に、地の文でこれまでのことや自分と雄一の関係性は軽く吹き飛んでしまうだけの関係だと言う。嫌いだわ~。
最後のムーンライト・シャドウは、不思議な話で悲しいお話というだけ。
【読書感想文】 高橋源一郎/退屈な読書 【2001年刊行】
書評の連載をまとめたもの。興味のあるものは手当たり次第といった風に、様々な本を読んで書評をつけている。
活字だけでなく、漫画や映画、写真集なども。おそらく源一郎氏の中で、「これは文学だ」と思ったなら、活字じゃなくてもなんでもいいのだろう。
一つのものに対しいろいろな角度からそれを見て、思ったことが書いてある。知らないものがほとんどだったが、興味がわいてタイトルと作者名をメモったものも結構ある。
なるほどなぁと感心したり笑ったりして楽しんで読めた。ぜんぜん、退屈な読書じゃなかった。
源一郎氏の書評本はまだ本棚に結構あるので、ちびちびと読んでいきたい。とても面白かった。
【海外ドラマ感想文】 GOTHAM/ゴッサム シーズン2
ようやくNetflixeでシーズン2が配信された。かなり待った。
第一話 大義のために
様々な話が一話の中で始まり、終わった。バーバラが怖い。この後いったいどうなるのだろうか。
第二話 悪の侵食
滅茶苦茶盛り上がってきた。まさかまさかの展開。そしてバットマンには欠かせない二人のキャラクターがメインとなってきた。
第三話 最後の笑い
チャリティー会場にジェロームが乗り込み、ピンチに。そして物語は二転三転する。
第四話 アルファ部隊
ゴッサム市警のボスが正義感溢れる男に代わり、ジムに部下がつく。ペンギンは仕方なく市長候補を……。
第五話 粛清
命じられるまま、ペンギンは放火魔兄弟を使ってウェイン産業が持つ建物を放火していく。ペンギンとギャラバンの戦いが楽しい。
第六話 運命の炎
今まで抑えつけられ、つけていたものが外れちゃったんだな。ペンギンの方は着々と進んでいる。
第七話 覚醒
ペンギンの怒りが止まらないね。ジムはようやっと、新市長のことがわかってきた。ブルースとセリーナはどうなる?
第八話 ブルースの決断
ブルースは自分の両親を殺した犯人の情報と引き換えにウェイン産業を売ろうとする。ジムはバーバラと決着をつける。ラストで思わぬ展開。ところでブルースとシルバーはどうなるんだ?
第九話 黒い友情
よりストーリーが重たくなってきた。ジムの中に潜むモンスター、ウェイン産業の闇を潰そうとするブルース、まだまだ企むギャラバン。
第十話 ゴッサムの息子
新たな組織、教団が出てきた。オカルティックな流れになってきた。そしてメインのほうもまたまたややこしくなって、続きが気になる。ブルースがどんどん強く格好よくなっていっている。
第十一話 正義と使命
ハラハラ・ドキドキな展開だった。ギャラバン関係はとりあえず終わり、次はDr.ストレンジというキャラクターがメインになるのかな。そしてラストにあのヴィランが。
第十二話 ミスター・フリーズ
愛する妻を冷凍保存するため研究を続ける男。なんらかの目的のために暗躍するストレンジ。ジムとペンギンはどう繋がるのか。
第十三話 愛の結末
妻のために人々を凍らし続けるフリーズ、止めようとするジム、フリーズを我が物にしようとするストレンジ、精神的に苦痛を与え実験されるペンギン。シーズン3でどうなっちゃうんだろう。
第十四話 マローンという男
ブルースはついに両親を殺した男にたどり着いた。そして、あることに気づき、行動する。ペンギンは実験を完了し、ニグマはより恐ろしくなる。
第十五話 ニグマの罠
タイトル通り、ニグマの罠にゴードンが引っかかって逮捕されてしまう。そしてThe O.C.に出てきたメリッサの母役のミンディ・クラークが出てきた。主人公も同じだし。
第十六話 偽りの家族
刑務所に入れられて命の危険がつきまとうゴードンと、善人になり家族を得たペンギンの話が交互に。まさかの展開に驚いた。ペンギンはどうなる?
ゴードンとペンギンの話は無事に解決。ブルースはキャットと別れ、父が残したパソコンを調べる……。ラストに出てきた人がこれからどう絡んでくるか、見ものだな。
第十八話 パインウッド
なんか一気に話が進んだな。ようやっとストレンジ博士と繋がってきたし。頑張れブルース。でもラスト、これやっちゃったらなんでもありになるじゃないか……。
第十九話 アズラエル
あの男が完全復活した。ジム、ブルース、ペンギン、腕切り落とされたペンギンの元部下、様々な思惑の中クライマックスへ。
第二十話 放たれた悪魔
うーむ、いろいろと駒が揃ってきたな。ここへ来てこの盛り上がりようはすごい。
第二十一話 救出作戦
ちょっとなんでもありになってきた。ストレンジが強すぎる。ジムたちがなにをやってもそれをわかっていて、為す術がない。ラストでとんでもないことになって。
第二十二話 地下に眠る怪物 [シーズン終わり]
シーズン2完結。まだまだ続きそうだ。とりあえず落ち着いて。早くシーズン3が観たい。
【映画感想文】 庵野秀明・樋口真嗣/シン・ゴジラ 【2016年公開】
早く観たかった一本。観ている途中に、「この映画はとんでもないぞ」とある意味で恐怖を覚えた。
【良い点】
・たくさんの人が出てくるが、役職と名前がテロップで出てくる点。物語の展開がかなり早いので、そこですぐにキャラクターの設定を頭に入れられる。
・特撮が嘘くさくなく、リアリティが出ている。
・これまでのゴジラとは違い、人間目線でゴジラの恐怖を描いている。
・日本が格好いい。
特筆すべき点は、日本政府が格好いいというところだろう。アメリカや他国に頼らず、あくまでも自国でゴジラを対処しようとする姿勢、日本人としての誇りを感じられる。しかしそれも説教臭くなく、単純にヒーロー物として日本が格好良く描かれている。
そして、2011年3月11日の地震とゴジラの災害が重なった。日本はあの時タコ殴りにされ辛酸を嘗めさせられたが、そんなことでは日本人は負けないぞという力強さを感じた。日本はまだまだやれる。そういう熱い思いが詰め込まれた熱い映画だった。
観ない理由はない。