読書感想ブログ

感想文をバシバシガシガシ書きます。

【映画感想文】【洋画】 ジョン・ポリカン/グレイヴ・エンカウンターズ 2 【2012年公開】

 POVのファウンド・フッテージ映画。


【あらすじ】
 若手の映画作家であるリチャード・ハーモン演じるアレックスは、仲間たちとホラー映画を撮影していた。アレックスは動画サイトで前作であるグレイヴ・エンカウンターズを酷評し、自分のほうが面白い映画を撮れるとうそぶいていた。
 そんなある日、アレックスのアカウントに、何者からかグレイヴ・エンカウンターズの未公開映像と手がかりが送られてくるように。
 仲間たちとのホラー映画をそっちのけで、グレイヴ・エンカウンターズの真実を求め取材を重ねる。そしてついに取材した病院の位置を知ったアレックスは、検証するためにその仲間を連れて病院へ向かう。


【感想】
 半分近くがアレックスの取材で、なかなか精神病院へ入ってくれないところが少し退屈に感じてしまった。しかしそこからはジェットコースター・ホラー・ムービーで、一息つく暇も与えてくれない。
 これはなんの映画でもそうだし仕方がないことなんだけれど、やっぱり1の衝撃は超えられなかったかな、と。いや、とても面白いしちゃんと前作の謎を解き明かしてくれているし、当然とても怖い。
 前作から逃げていないな、と感じた。

 興ざめポイントが二つあった。まあどちらも仕方ないといえば仕方ない。


【よい点】
・RECのように続編からPOVやファウンド・フッテージ要素がなくなるわけではなく、ちゃんと丁寧にPOV、ファウンド・フッテージ映画として仕上がっている。
・前作と同様の絶望感を与えてくれる。
・観終えた時に感嘆の息を漏らしてしまった。感動した。

【悪い点】
・前述した、二つの興ざめポイント。
・前半の取材シーンをもう少し減らしてほしかった。

【映画感想文】【邦画】 白石晃士/ある優しき殺人者の記録 【2014年公開】

 ホラー・モキュメンタリーを多く手がける白石晃士監督による日本・韓国の合作映画。
 血みどろ・サイコ・エロチック・サスペンス。


【あらすじ】
 障害者施設を脱走し、十八人もの人間を殺害した容疑がかけられ、指名手配されたパク・サンジュン。彼の幼馴染であるジャーナリストのソヨンは彼から取材依頼を受け、知人のカメラマン・田代と共に、とある廃マンションの一室に呼び出される。マンションに到着したソヨンと田代だが、包丁を手にしたサンジュンに脅され、「これから起こる事」を全て記録するよう命じられる。
 大量殺人を犯したことには理由があった……。


【感想】
 長回し風で撮られたPOVモキュメンタリー映画。常に緊張感があり中だるみすることなく、畳み掛けるように話が展開してゆく。途中でセックス・シーンが入った時は思わず笑ってしまったが、緊迫するサスペンスと暴力が渦巻くアパートの一室で、愛する人のために思いを成し遂げるというテーマが上手く絡み合い、POVの手法もあって物語に没入した。約九十分でまとめられており、中だるみすることなく最期まで一気に楽しむことができた。
 精神疾患患者の単なる妄想から始まる殺人が、本当に神のお告げがあったかもしれないと思わせる展開がとてもおもしろかった。


【よい点】
・手に汗握る展開。
・監督の他の映画と同様に、おかしなポイントがなく練り込まれたストーリーと展開。
・サイコでサスペンスなのに悲しい。

【悪い点】
・監督の他の映画と同様に、観る人を選ぶ。
・悪い点が見当たらないところ。

【映画感想文】【洋画】 ジョン・ラッセンホップ/飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲 【2013年公開】

注意! R-18指定映画です! お子様が鑑賞すると人格に影響があるかもしれませんが、ないかもしれません!

 スプラッター映画の偉大なるパイオニア悪魔のいけにえの最新作で、1の続編。つまり2だの3だのを無視したパラレル・ワールド。

【あらすじ】
 1のラストで生き残ったマリリン・バーンズ演じるサリー・ハーデスティの証言によりこれまでの悪事が公となってしまった殺人一家ソーヤー家。家に向かった警官を無視し、自警団というただのチンピラ集団により虐殺され、家は燃やされてしまった。唯一生き残った赤ん坊ヘザーちゃんは自警団の夫婦に半ば強引に助け出された。
 これにより、テキサス・チェーンソー大虐殺は終わりを迎えた……。

 二十年後、成人になったヘザーちゃんの元に、祖母が亡くなったという知らせが入る。そこでヘザーは、目の前にいる両親が本当の両親ではないことに気づいてしまい、「あそこへは絶対に行ってはいけない」という両親に反発し、友人たちと祖母が住んでいたとされる洋館へ向かう。

 レザー・フェイスが待っていることも知らずに……。


 一言で言えば、痛みの感じないゴア描写を大量に詰め込んだ映画。初代悪魔のいけにえは、ゴア描写はおろか血さえほとんど出ず、荒い映像で精神に訴えかけるホラーだった。鉄の扉をがらっと開け、「ピギー!」とレザー・フェイスが叫び、脳天にハンマーが叩きつけられる。このシーンの怖さったらない。

 まあ初代のことを述べても仕方がないので。

 主人公であるヘザー役のアレクサンドラ・ダダリオがとんでもない美人。パイオツもカイデーだし、ずっとへそ出しで行動するからそっちばかりが気になってしまった。スプラッター映画では定番のエロスがあるんだけれど、ヘザーではなくブロンド美人のニッキー役のタニア・レイモンドが主にその役を頑張っている。でも別に大したことない。

 中盤まで、こりゃ駄目かなと思っていた。よかったポイントは、シリーズ定番の肉刺しフックを背中に貫通させて吊るところと、スプラッター映画では定番の、なんの脈略もなく突然出てきてバチコーンと襲うところ。
 タイトルに、一家の逆襲とあるが、レザー・フェイス以外の家族は冒頭で皆殺しにされてるしなぁ……。

 前述したとおり、痛みの感じないゴア描写がたくさん。それを述べちゃうとなんの楽しみもないのでやめておくが、正直大したことない。肉刺しフックとかはすごく痛みを感じるのに、なんだか変な方向に走っちゃったな、と。

 悪魔のいけにえのリメイクである、テキサス・チェーンソーは痛々しいし悲壮感もたっぷりでよかったのに、正統続編という設定のコイツはなんなんだよ、ヘザー可愛いなあと観ていた。

 すると途中からストーリーが変わっていった。あーなるほど、ここのアレはコレだったのか的な細かい伏線が散りばめられていることに気づいた。

 そこからはまあまあという感じだったが、別にそんな人におすすめできるほどの映画ではない。腸とか血が大好きなら観ればいいんじゃないっすか……。


【よい点】
・ヘザーが美人。
・肉刺しフック。
・チェーンソーの心地よいサウンド。
・一時間半で終わる。
・観なくても別に人生損しない。

【悪い点】
・つまらないだけの大量のゴア描写。
・観なくても別に人生損しない。

【映画感想文】【邦画】 白石晃士/カルト 【2013年公開】

 白石晃士監督による、一大スペクタクルなモキュメンタリー・ホラー映画。はっきり言ってめちゃくちゃ面白い。めちゃくちゃ面白いしめちゃくちゃ怖い。

 一番最初に述べておきたいのは、モキュメンタリーというジャンルの中にファウンド・フッテージというものがあるということ。異なるジャンルではない。

 あくまでも僕の中では、モキュメンタリーはすべて作られた世界でドキュメンタリーを楽しむ。編集もされているし、有名俳優も出る。ファウンド・フッテージは、友人宅に遊びに行った際、「兄貴が友だちから借りたビデオなんだけどさ……」と言って出してきて観るようなもの。前述の通り編集はほとんどされていないし、無名俳優が出る。

 という分け方をしたとしたとしても、正直作品を出したところでわけがわからなくなる。

 例えるならブレア・ウィッチ・プロジェクトファウンド・フッテージであるし、グレイブ・エンカウンターズはファウンド・フッテージであるし、REC1と2はファウンド・フッテージであるし、クローバー・フィールド/HAKAISHAはファウンド・フッテージであるし、パラノーマル・アクティビティファウンド・フッテージであるし、ダイアリー・オブ・ザ・デッドはモキュメンタリーであるし、食人族はファウンド・フッテージであるし、放送禁止は編集が入っているからモキュメンタリーであるし、大日本人はモキュメンタリーであるし……。じゃあ悪魔のいけにえはどうなるの? 死霊のはらわたとかさ!

 観てきた映画を上げてみたが、う~ん、わからない……。わかりません。じゃあPOVはどうなるんだい……。わかりません。


 映画の感想。

 ノロイで日本版ブレア・ウィッチ・プロジェクトを作り上げた白石晃士監督が、それを何倍も上回る素晴らしいモキュメンタリー映画を撮った。

 口裂け女では一転して一般的な日本ホラー映画を撮り、ゴア描写が激しすぎてR-18規制となったグロテスクはもうそのままで観るのも辛い拷問映画で、「ああ白石晃士監督はそっちに行ったのか。まあSAWやらホステルやらがヒットしてたしな」というわけで、グロテスクで離れた。ゴア描写を頑張られると、バタリアン3で吐いた僕としてはついていけなくなる。

 そして去年、貞子vs伽椰子という日本ホラー映画の二大スーパー・スターの映画を撮るという情報を得て、「あっ、ホラーに戻ってきたのか」と思い、先程なんとなくNetflixをざっと眺めているとこのタイトルが目に入ったので、正直期待せずに観た。

 期待せずにというのはいろいろ意味があるんだけれど、結局このモキュメンタリーだのファウンド・フッテージだのっていうのは、そういう設定だと知った上で、こちらから入り込んで楽しむジャンルであるということ。しかし本当の楽しみ方は、前述の通り、このビデオはマジでヤバイやつかもしれんな……と思いながら観るものである。

 そこを上手くやったのは、長江俊和監督作の放送禁止だろうね。夜中の二時だの三時に突然始まって、突然終わる。なんの説明もない。それも正直ドラマ版までで、映画になるともうこちらがそういう設定上で楽しむものになっている。
 無名俳優だけで作り上げても、結局は虚構であって。予算がかからないから増えて、ヒットして、続編が出て、ゴミになる。


 映画の感想。

 タレントをメインに置き、バラエティで使うホラー映像を撮影しようと。ある母子が住む一軒家に行きます。雲水先生という凄腕の霊能力者を連れてきます。とんでもないことが起こります。少しだけゴア描写り。雲水先生ではどうにもならないので、師匠の龍玄先生のお力を借ります。

 そこからもう、怒涛のジェットコースター的な展開で、謎が謎を呼び、忍び寄る恐怖感があり、めちゃくちゃ怖くて、僕の部屋の窓の外に干していた洗濯物が窓に当たる大きな音に、「のうェェェイ!」と叫び声を上げ……。

 教科書のような作りになっている。入りの設定からそうだし、メインのあびる優氏が映画を観ている立場になっており、その時々の疑問を言ってくれるし、そんなめちゃくちゃおかしいこともないし、低予算でビシバシと作られているし、母親役の小山田サユリ氏はとても美しいし、あの龍玄先生を、「龍ちゃん」と呼び、数々の恐怖体験を、「面白い」と言うスーパー霊能力者NEO役の三浦涼介氏はめちゃ格好いいし……。

 まあとにかく最初の十五分を観たら、ラストまで一気ですよ。


【よい点】
・モキュメンタリー入門映画として最適。
・母親役の小山田サユリ氏がとても美しい。
・謎が謎を呼ぶ、素晴らしくホラーな展開。

【悪い点】
・雲水先生の演技がオーバーすぎる。これは同監督作のノロイでも思ったことなんだよなぁ……。
・一人で観るとめっちゃ怖くて風呂に入れなくなる。
・感想文が長くなる。

【総合】
 ★★★★★

【映画感想文】 ユエン・ウーピン/ドランクモンキー 酔拳 【1979年公開】

 日本で最初に公開されたジャッキー・チェン氏主演の映画。

 おそらく幼少時に繰り返し観ていたので、内容は覚えているかと思っていたが、まったく覚えていなかった。というよりも、観ていないのかもしれない。

 ストーリーは、名門道場の息子であるジャッキー・チェン扮するフェイフォンは、カンフーの腕前はそこそこ、正義感もあるのはあるのだが、道場の友人たちと自堕落な生活を送っていた。
 師範代をからかい父のお叱りを受けたフェイフォンが憂さ晴らしに友人たちと市場へ出かけたところ、可愛い娘を見つけたのでちょっかいをかける。しかしそれは従姉妹であり、道場に帰った際に叔母にメタクソにされる。
 こりゃいかんと、親父はフェイフォンをユエン・シャオティエン扮するスー・フアチーの元で修行をさせる。スー・フアチーは、酔拳という拳法の名手だった。

 それで、修行したりメタクソにされたり、修行したりメタクソにされたりして、ライバルの道場主が親父の持つ山にある石炭を奪いにやってくる。
 それで、なんだかんだあったりなかったりして、ウォン・チェン・リー扮する殺し屋のイン・ティッサムとビシバシする。

 終わり。

【悪い点】
 ・カンフー映画なので仕方がないとはいえ、雑魚戦が長い上に多い。
 ・タイトルが酔拳なのに、ラストのラストまで出てこない。師匠曰く、「基本を身に着けんと酔拳は教えられない」
 ・ストーリーがない
 ・観ても強くなれない。

【よい点】
 ・ジャッキー・チェン氏の鍛え抜かれた肉体美とカンフー・アクションを、これでもかと堪能できる。
 ・待ちに待った酔拳のアクションが格好いい。
 ・子どもから大人まで楽しめる、シンプルでわかりやすいストーリー。
 ・観終わったあと、なんだか強くなった気がする。

【総合】
 ★★★☆☆

【読書感想文】 村上春樹/村上さんのところ 【2015年刊行】

 ボリュームたっぷりだった。読み終わるのに二、三ヶ月はかかった。

 内容は、村上さんのところというサイトを立ち上げ読者からのメールを募集し、村上春樹氏本人が返信したものをまとめた本。

 質問の内容も、社会情勢について、作品について、読者の悩み相談、おふざけ系など様々。回答の内容も、真面目に答えたりおふざけで返したり、様々。
 小説やエッセイでは知れない村上春樹象を垣間見ることができる。

 なお、電子書籍では質疑応答が数倍以上収録されているコンプリート版が出ている。その数、三千七百十六問! 一日十個読んでも一年はかかる計算。Kindle PWを買ったら、コンプリート版も買おうと思っているが……。

 内容はかなり面白いので、毎日少しづつ読む楽しさはある。

【読書感想文】 西村賢太/芝公園六角堂跡 【2017年刊行】

 四つからなる短編集。ひとつひとつ感想を書こう。

芝公園六角堂跡
 表題作。稲垣潤一氏のファンになった経緯、そして今では一緒に食事をしたりライヴに呼ばれるようになったことを述べる。そして今回呼ばれたライヴの場所の近くが、師と仰ぐ藤澤清造氏の終焉の地だった。そして北町貫多は師に対してのとある思いを抱く。

 いつもの藤澤清造話ではあるが、内容はこれまでとまったく異なる。そしてもう一つ、これまでとは少しばかり違う大きなポイントがあるが、それを述べると面白さが八割減になりそうなのでやめておく。
 読み終えた瞬間、単純に、「あ、面白かった」と思える。西村賢太氏に外れなしだと常々思っているが、私はやはり長編より短編のほうが好きかな、と。

追われなかった夜の彼方で
 芝公園六角堂跡から直接繋がった短編。稲垣潤一氏のことをJ・Iと表記し、作中の描写を変えてしまったという後悔と、師である藤澤清造氏のことを考える。

 表題作と同じで、いつもとは異なる。氏の師への思いは、そして自分が私小説を書く思いは、今も昔も変わらないのかどうか、について考えている。
 度々氏の小説に出てくる古書店店主の会話を使い、考える。
 表題作もそうだが、作中にはこれまで何度も書いてきた、田中英光のこと、藤澤清造のこと、某新人文学賞までのことを重ねて重ねて、いったい自分はどうなのかと追求している。そしてその重ね方は、読み手によっては、「またかよ」と思うかもしれないが、私はまったくそうは思わない。そう思うのであれば、私小説を読むのをやめたほうがいい。
 という私自身、そんなにたくさんの私小説を読んだわけではないのだが。


深更の巡礼
 様々な仕事が重なり忙しい中で、田中英光傑作選の校訂を続ける北町貫多。編集者の差別用語にうるさく、やたらとルビをふりたがるのに嫌気を感じる。
 古書店店主から、「十万円から三十万円で落とせるようなものにキチ◯イじみた入札をするな。もう有名だから、狙われ始めるぞ」と忠告を受け、いつもの北町貫多口調でてらてらと返す。
 校訂を続けていると、田中英光につぎ込んでいた二十代の頃を思い出し、楽しくもなってくる。

 三作続けて、二三年前のかなり最近の話。この短編集の前に出たのが、十代の頃を描いた蠕動で渉れ、汚泥の川をだったから、そういう意味で新鮮だったのかとも思う。
 面白かった。


十二月に泣く
 藤澤清造の生まれた地、能登七尾へ赴く。といってもその日は月命日ではないので、別の用事で。

 どういう感想文を書けばいいのか困ってしまう。住職関連で面白い話があるので、それを読むための短編かな、と。


 読み終えて思ったのは、短編集ではなく連作集だなということ。基本は表題作である芝公園六角堂跡に関連していて、そこから話を組み立てている。
 間違いなく氏の最高傑作だと思う