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【読書感想文】 東野圭吾/歪笑小説 【2012年刊行】

 さて、東野圭吾氏の歪笑小説の感想文です。

概要

 東野圭吾氏の◯笑小説シリーズ第四弾。これまでとは異なり、文壇関係者を描いた連作短編集となっている。

あらすじ

・伝説の男
 灸英社書籍出版部に配属された青山。ミステリ小説を出版したいという青山にとって、その職場はまさに夢の職場だった。伝説の編集者であった編集長、獅子取のもとへ挨拶へ行くと、初っ端から「スポーツは出来るか」と質問された。なぜそんなことを聞いたのか。青山は後に知ることとなる。

・夢の映像化
 新米作家、熱海圭介のデビュー作『撃鉄のポエム』が2時間ドラマ化する企画が出された。圭介は有頂天で、友人、親や親戚などに言いふらしてまわる。あの有名俳優に演じて欲しい、などと勝手な妄想を抱く圭介のもとに送られてきた企画書は、原作には全く忠実でなかった。無論圭介は怒りだし……。

序ノ口
 灸英社のゴルフコンペに無理やり参加させられてしまった唐傘ザンゲ。全く乗り気ではなかったが、灸英社編集長・獅子取にそそのかされてしまう。しかも向かう車には大物作家が同乗する。何とか切り抜けようとする唐傘だったが……。

・罪な女
 小堺の多忙さを解消するためやってきた新人編集者・川原美奈が、熱海圭介の担当となった。無論、圭介は彼女を見た瞬間から舞い上がり、彼女からのメールを嬉しく読んだり、スキップをしてしまったりと、ついうっかり感情をあらわにしてしまう。

・最終候補
 突然、新部署へと移動になった石橋賢一は、衝動的に小説を買ってしまう。しかしその小説で自分で書くことを思いついた石橋は、登場人物を決め、構成を練り、念入りに書き始める。会社や妻からも不振がられるが、ついに完成した小説を文学賞へ応募した。数日後、出版社から最終候補の見込みがある。という電話がかかってきて……。

・小説誌
 編集者、神田の息子ら中学生が、週刊誌『小説灸英』の編集部へと見学に来た。彼らの面倒役を押し付けられた青山は、しぶしぶと案内していく。だが、青山に待っていたのは、彼らからの壮絶な質問攻めだった。何とか解答していく青山。だが、だんだん質問がエスカレートして行く。

・天敵
 唐傘ザンゲの恋人・元子は唐傘の小説の世界一のファンだと自称していた。しかし編集者の小堺にとって、元子は唐傘の小説に口出しするマネージャー気取りでしかなかった。編集長の獅子取までが一番やりづらいタイプ、とまで評する元子と小堺。2人の思いが交錯する。

文学賞設立
 灸英社によって、『天川井太郎賞』という新たな文学賞設立の話が持ち上がった。その文学賞は、独自の視点でエンターテイメントの優秀な作品をたたえるというものだった。だが、敵対している出版社などからは『天井賞』『天丼賞』などと馬鹿にされていた。そんな中、候補作が選ばれたが……。

・ミステリ特集
 『週刊灸英』でミステリ特集を組むことになった。10人の作家に、さまざまなジャンルのミステリを書いてもらう、というまさに十人十色の特集だった。だが、肝心なところで1人の作家が倒れてしまう。ピンチヒッターとして選ばれたのが、まさかの熱海圭介だった。ミステリの書き方を一から学ぶほどの圭介だが……。

・引退発表
 これが最後とまで言われていた賞を逃し、すっかり筆を下ろしてしまった寒川心五郎。しかし自分にきりをつけたいと、編集者の神田を家に呼び寄せ、引退を宣言する。もはや寒川は書かないと思っていた神田は、正式な引退など作家には無いと思っていた。だが寒川は、記者会見を開くなどと口走る。

・戦略
 売れない作家・熱海圭介に、チャンスがやってきた。編集長の獅子取が圭介の小説の妙な味に目をつけたというのだ。獅子取はここぞとばかりに新刊の出来をチャックし、圭介自身にもスタイルの変化を要求する。戦略はどんどん続いていった。ついに発売日となったが、果たしてチャンスはまわってくるのだろうか。

・職業、小説家
 唐傘と元子が、ついに結婚を考え始めた。元子の父は、全く小説を読まない人物だったが、娘の結婚相手が小説家であったことを知り、大いに悩む。現在の唐傘の年収は約400万程度だからだ。それでまともに生活していけるのか。そんなときに、元子が唐傘のマネージャー役として、退職すると言い出したのだ。さらに悩みが深まった父は……。

・巻末広告
 この短編集に出てくる作品、または関連する作品が書かれている。あくまでジョークであり、作者自身によって書かれた。

歪笑小説 - Wikipedia

感想

 大満足でした。読み切るのに一日もかからなかった。
 普段僕たちが見ることのできない文壇という特殊な世界でのドタバタ劇。あくまでもフィクションではあるが、とても興味深い世界だなと。
 ハードボイルドもどきの臭い小説撃鉄のポエムとか虚無僧探偵ゾフィーとか実際に読んでみたい。
 巻末広告の作者の力の入れようには笑ってしまった。
 基本的にはげらげら笑えるが、序ノ口とか職業、小説家みたいないい話もあって読み応えはたっぷり。でも、小説誌とかかなり喧嘩売ってるよなぁ……。


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