【読書感想文】 高橋弘希/日曜日の人々 【2017年刊行】
【概要】
個人的に新作が待ち遠しい作家の一人で、外れのない作家の一人。
主人公である大学生の航と同い年の従姉である奈々が自死し、死後手紙が届くところから始まる。航と奈々は最後まではいかないものの、恋人のような関係だった。
航は生前の奈々が参加していた、精神疾患の人たちが集まる自助グループ「レム」に通い始める。レムの代表もまた次々と自死し、会員は拒食症、窃盗、自傷などの嗜好を朝の会で発表する。時にはメンバーで仲良くキャンプなどにも出かける。
【感想】
高橋弘希氏の小説を読む時にいつも思うことだが、よくまあここまで調べ上げたな、と。僕みたいなプロの(?)精神疾患患者が感心してしまった。序盤になかなかハードなリスト・カット描写があるが、こいつがまた素晴らしく気持ちが悪い。いやあな気持ちにさせられる。実物や写真で見るのは当然きついが、文章でここまで嫌悪を感じられる描写が素晴らしい。僕なんて採血されるところを見るのすらも無理な弱い人間なので、この描写でちょっと挫折しかけた。それほどにいい。
度々出てくる専門的な用語や行動も正確でとてもいい。リスト・カットした後に止血にはラップがいいんだよなあ。
人からすればまったくもってどうでもいいことで簡単に自死してしまう、というよくあることがさらりと入っているのもいいね。
文章も相変わらず丁寧で地に足の着いたしっかりとしたもので、読むのが止まらない。救いのない話のあいだあいだに微かな希望が描かれる構成なので、読んでいてずっとつらいというわけでもない。
精神疾患患者もそうでない人にも読んでいただきたい一冊だと思う。