読書感想ブログ

感想文をバシバシガシガシ書きます。

【読書感想文】 吉行淳之介/原色の街・驟雨 【1966年刊行】

 この本が初吉行淳之介でありまして、しかもこれまで第三の新人は一切読んだことがありませんで、期待と不安がないまぜの状態で読んだわけでやんすが、まずひとつ言えることはですね……文章旨すぎない?

 文章のお手本を読んでいるかのよう。芥川龍之介賞受賞作の「驟雨」から、特に気に入った一文を抜き出してみよう。

「今度お会いするまで、わたし、操を守っておくわね」
 とささやくと、微笑みを残して急ぎ足に去っていった。取残された彼の心に、このときはっきりと、女が固有名詞となって這入りこんできた。

 

「どうせ、わたしは淫売だよッ」
 略
「へえ、おまえ淫売だって。インバイって、いったいどんなことをするんだい」
「ヘン、そんなこと知らないのか。淫売てのはね」
 略
「そりゃね、インをバイするのさ、ハハハ」
「アッハッハ」


 娼婦と恋に落ちてその中で苦悩する切ないお話「驟雨」、結核の入院記録である「漂う部屋」が特にお気に入り。この間読んだ高橋弘希氏の朝顔の日も結核のお話だったなぁ。肋骨を抜いて肺を圧迫するとか大量の喀血とか、とても恐ろしい。


f:id:retsudansensei:20180121102141j:plain