読書感想ブログ

感想文をバシバシガシガシ書きます。

【読書感想文】 高橋弘希/朝顔の日 【2015年刊行】

 二冊目にして芥川龍之介賞候補作。デビュー作は戦争文学の指の骨、三冊目のスイミングススクールは母親の心の動きを描いて、二冊目は開戦前後の工場作業員である主人公と闘病中の嫁の切ない交流を描いた。

 

 感想文で僕が何度も書いている「どうしようもなさ」が溢れまくっていてとてもいい。主人公にはどうすることもできない。それを冷静に淡々と描写するのもとてもいい。

 愛する相手との会話が禁止されるなんて、考えただけでも苦しい。

 

 そしてやはり、さすが高橋弘希氏だなぁと唸らせる文章のきめ細やかさ。舞台の設定が設定なので、見慣れない言葉も出てくるが、雰囲気がよく出ている。

 

 高橋弘希氏は常に新たなものを描く。経験していようがしていまいが、自分と違おうが違うまいが、その時代を知ってようが知らまいが関係ない。徹底的に調べ上げ、それを紡ぐ。職人技だ。

 

 だからこそ、芥川龍之介賞を獲っていただきたかったが……。それはそれ、これはこれ。

 

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