読書感想ブログ

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【読書感想文】 羽田圭介/スクラップ・アンド・ビルド 【2015年刊行】【第153回芥川龍之介賞受賞作品】

 高校生でデビューして以来何度も何度も芥川龍之介賞の候補になるも落選し続けた羽田圭介氏の、ようやくの芥川龍之介賞受賞作品。
 羽田圭介氏の作品を読むのはこれで二作目なので、とても楽しみにしていた。

【概要】
 スクラップ。
 主人公である健斗は、「早く死にたい」が口癖の祖父の願いを叶えるべく、過剰な介護をすることにより体の衰えが早まり苦痛のない死が近づくだろう、という独自の理念に沿って、これまで母と行っていた手を差し伸べない自立を促す介護から、被介護者からすべての動きを奪う過保護的介護に切り替える。

 ビルド。
 健斗は、強靭な精神と肉体を作るために執拗なまでに体をいじめ抜く筋トレをし、射精機能を衰えさせないためにと日に三度オナニーをし、食事ですら筋肉のための栄養補給と割り切る、度を超えた筋肉バカ。彼女とのセックスですら筋トレと考えているほど。

【感想】
 このスクラップとビルドが繰り返されるわけだが、スクラップは祖父のキャラクターがよく描かれており、嫌悪感を抱いた。母と祖父の会話はとても生き生きとしており、介護の陰惨さが感じ取れる。
 ビルドはひたすら筋トレ。

 僕はどちらかというと、ビルドのほうが面白く感じた。というのも僕も、過去形ではあるが週に三回肉体労働の後にジムに通い、二時間半ほど体をいじめていたことがあったので、用語もすべて理解できるし、あまりの苦痛さにもう二度とやりたくないと思いながらもまた定時になると筋トレを始めているアホさがとてもよく理解できる。食事もそうで、たんぱく質がどうたらで糖がどうたらとか考えてしまう。

 衰えきりそれに甘えている祖父と、衰えさせないためにストイックな生活を送る健斗。展開にわくわくさせられ、結末は一体どうなるのかと思いながら一気に読んだ。とても面白かった。内容が内容なだけに鬱々とさせられるかと思いきや、読後感はとても爽快だった。


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