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【読書感想文】 村田沙耶香/殺人出産 【2016年刊行】

 コンビニ人間でがっつりとやられてしまったので、積んでいた本作をすぐに崩した。

 「アホやなぁ」の一言に尽きる。当然褒め言葉。設定も登場人物もぶっ飛んでいるSFなので、なんだか筒井康隆氏の短編集を読んでいるような気がした。

殺人出産

 表題作なんですけれども、「十人出産したら誰か一人を殺してもいい」という世界の話。女性に限らず、男性も人口子宮を装着すれば出産が可能。しかし十人出産するのは至難の業なのでハードルが高い。
 主人公の姉がまさに殺人出産をしていて、そんな主人公に近づいてきた早紀子は、ルドベキア会という、「殺人出産なんて倫理的におかしい。産み人とかいって美化しているが、殺人を餌に出産させているだけだ」と殺人出産を真っ向から否定する会の会員で、姉に会わせろと言う。

 設定だけでもうわくわくしてきちゃうよね。ハードルは高いものの、殺人が合法になっているので、いつ自分が殺されるのかという不安もある。主人公の同僚はあっさりと殺されてしまう。しかし、殺した側も殺された側も美化されている。自分の代わりにたくさん出産してくれてありがとう、自分の代わりに死んでくれてありがとう、と。


トリプル

 個人的に一番ぶっ飛んでいる短編かな、と。男女二人でのカップルとしての恋愛より、男女三人でもトリプルという恋愛が若者のスタンダードになっている世界の話。主人公の母親は「トリプルなんて汚らわしい!」なんていう前世代の見方をし、主人公は「カップルなんて時代遅れよ、自由でいいじゃない!」という現世代の見方をする。

 男二人女一人のトリプルのセックスの描写が繰り広げられる。正直「気持ちが悪い」と思ったが、僕も主人公の母親のような「トリプルなんて汚らわしい!」という考え方なんだなと思いましたね。うん。


清潔な結婚

 家族なのにセックスするのはおかしい。兄弟みたいな結婚生活がしたい、という夫婦の話。でも子どもは欲しいので、最先端のクリニックへ行きましょう。

 「それでは、今から旦那様が精子をお産みになります」って、笑かしにかかっとんのか。爆笑したわ。夫は看護師にオナホールでしごかれて、妻はそれを受け止める。家庭内でのセックスは禁止なので外でするわけだが、夫がまた面白い性癖の持ち主で、「こんな性癖の人とセックスしなくて助かったわ」なんていう流れもある。
 トリプルほど気持ちは悪くなかったが、まあもうわけがわからない。


余命

 掌編。「医療が発展し、死がなくなった。老衰も事故死も他殺もない。百歳二百歳まで生きられる。なので死に方にこだわろう」という話。

 あらすじを説明したら終わっちゃったよ。


 まとめとしましては、コンビニ人間もそうだったけれど、主人公たちの意見を真っ向から否定する人々が滑稽で人間臭く描かれているので、逆に、主人公たちの意見が正当化される。それが作用して、ぶっ飛んだわけのわからない設定にリアリティが生まれる。
 筒井康隆氏的ワールドであれば、ぶっ飛んだ設定でぶっ飛んだ結末を迎えるところだが、読後感が清清しい。

 殺人衝動だとかセクシャル・マイノリティだとかウンヌンカンヌンで暗い世界観なのに、基本的に笑かせにかかっているので、笑いながら楽しんで読めた。

 完全に、村田沙耶香氏の世界にはまりこんでしまったようだ。


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