【読書感想文】 村田沙耶香/コンビニ人間 【2016年刊行】
第155回芥川龍之介賞受賞作。
やたらと話題になっていたので気になっていた。ようやく読めた。読み始めて、気がついたら終わっていた。
感情も恋愛経験も就職経験もセックス経験もなにもない、主人公古倉。簡単に述べてしまえば、この人には「当たり前」という概念が通じない。十八年間コンビニでアルバイトを続けているというだけで、異質なのがわかる。
しかし自分が「異質」なのは理解していて、それを隠して生活している。
そんな古倉のすべてであるコンビニに、白羽という三十五歳で恋愛経験も就職経験もセックス経験もない「異質」な男がやってくる。世の中のものすべてに憤りを感じている。最初に思ったのは、こりゃまたとんでもないキャラクターだな、と。古倉のおかしさとはまた別のおかしさの塊で、振り切っているのにリアリティを感じる。それは古倉も同じで、振り切っているのにリアリティを感じる。
白羽が出てきてからは、古倉と白羽の「振り切った人間対振り切った人間」のやり取りが繰り広げられる。そして、「コンビニで働いている人間を演じていた」ことが崩壊してゆく。
単純に面白かった。読む手が止まらなかったし、エンターテイメントしていてとても読みやすかった。
僕はセブン・イレブン、ファミリー・マート、ローソンでアルバイトしたことがあるが、朝礼なんてなかったしここまで皆が皆きびきびとはしていなかった。
読めてよかった。