読書感想ブログ

感想文をバシバシガシガシ書きます。

【読書感想文】 高橋源一郎/丘の上のバカ ぼくらの民主主義なんだぜ2 【2016年刊行】

 ぼくらの民主主義なんだぜの続編。とはいうものの、朝日新聞の連載は十二本だけで、残りは著者が様々な場所で書いてきた政治評論。こちらがメイン。

 こういう内容の本の感想を書くのは難しい。僕は高橋源一郎氏の信者なので、どうしてもほとんどを肯定的に読んでしまう。なので偏ってしまう。

 一つだけ述べるとするなら、第二章の安倍さん(とその友だち)のことばに書いてあること。短くまとめてみよう。

 安倍さんやその周りの百田尚樹さんは、「戦後から続く自虐史観は日本の子どもたちから自信と誇りを奪っている。自分たちは南京大虐殺やその他諸々、他国に酷いことをしてきた人たちの血を受け継いでいる、恥ずべき血だと教育する。そういうことをしていて日本がよくなるのかね」と言っているが、小学生が真面目に教師の言うことや授業を聞いているわけがない。早く帰ってゲームがしたい、アニメを観たい、そう思っているだけだ。実際にアンケートを取ってみても、小学生の頃の授業内容を覚えている人は、全体の五パーセントしかなかった。授業でそう教えたからといって、絶対にそういう子どもになると断言するのは、子どもたちに失礼だ。
 そして、安倍さんがや百田尚樹さんにとって自虐史観は政治のアイテムになっているので、その意見を推し進めている。自虐史観が必要なのはこの二人だ

 なるほどなと思った。確かに、僕自身子供の頃の授業内容なんてほぼほぼ覚えていない。

 著者が生まれる前に大戦争で亡くなった叔父の最後の場所フィリピンへ行き手を合わせる話は悲しくなった。他国で亡くなって発見もされずその国で眠っている人たちの魂はどこにあるのだろう?

 オバマ元大統領の広島でのスピーチの話もなるほどと思った。
 オバマ大統領は長いスピーチの中、私という言葉は二回しか使っていない。その他はすべて私たちだ。私たちという言葉には、日本人もアメリカ人もイギリス人も北朝鮮人も入っている。私がとすると、イコールアメリカになるので、アメリカが広島と長崎に大量殺戮兵器の原爆を落とした、とアメリカの非を認めてしまうことになる。だから私たちという言葉を使った。
 だから美しく感動するスピーチになっている、と。

 ボリュームたっぷりでとても面白かった。