【映画感想文】【邦画】 白石晃士/カルト 【2013年公開】
白石晃士監督による、一大スペクタクルなモキュメンタリー・ホラー映画。はっきり言ってめちゃくちゃ面白い。めちゃくちゃ面白いしめちゃくちゃ怖い。
一番最初に述べておきたいのは、モキュメンタリーというジャンルの中にファウンド・フッテージというものがあるということ。異なるジャンルではない。
あくまでも僕の中では、モキュメンタリーはすべて作られた世界でドキュメンタリーを楽しむ。編集もされているし、有名俳優も出る。ファウンド・フッテージは、友人宅に遊びに行った際、「兄貴が友だちから借りたビデオなんだけどさ……」と言って出してきて観るようなもの。前述の通り編集はほとんどされていないし、無名俳優が出る。
という分け方をしたとしたとしても、正直作品を出したところでわけがわからなくなる。
例えるならブレア・ウィッチ・プロジェクトはファウンド・フッテージであるし、グレイブ・エンカウンターズはファウンド・フッテージであるし、REC1と2はファウンド・フッテージであるし、クローバー・フィールド/HAKAISHAはファウンド・フッテージであるし、パラノーマル・アクティビティはファウンド・フッテージであるし、ダイアリー・オブ・ザ・デッドはモキュメンタリーであるし、食人族はファウンド・フッテージであるし、放送禁止は編集が入っているからモキュメンタリーであるし、大日本人はモキュメンタリーであるし……。じゃあ悪魔のいけにえはどうなるの? 死霊のはらわたとかさ!
観てきた映画を上げてみたが、う~ん、わからない……。わかりません。じゃあPOVはどうなるんだい……。わかりません。
映画の感想。
ノロイで日本版ブレア・ウィッチ・プロジェクトを作り上げた白石晃士監督が、それを何倍も上回る素晴らしいモキュメンタリー映画を撮った。
口裂け女では一転して一般的な日本ホラー映画を撮り、ゴア描写が激しすぎてR-18規制となったグロテスクはもうそのままで観るのも辛い拷問映画で、「ああ白石晃士監督はそっちに行ったのか。まあSAWやらホステルやらがヒットしてたしな」というわけで、グロテスクで離れた。ゴア描写を頑張られると、バタリアン3で吐いた僕としてはついていけなくなる。
そして去年、貞子vs伽椰子という日本ホラー映画の二大スーパー・スターの映画を撮るという情報を得て、「あっ、ホラーに戻ってきたのか」と思い、先程なんとなくNetflixをざっと眺めているとこのタイトルが目に入ったので、正直期待せずに観た。
期待せずにというのはいろいろ意味があるんだけれど、結局このモキュメンタリーだのファウンド・フッテージだのっていうのは、そういう設定だと知った上で、こちらから入り込んで楽しむジャンルであるということ。しかし本当の楽しみ方は、前述の通り、このビデオはマジでヤバイやつかもしれんな……と思いながら観るものである。
そこを上手くやったのは、長江俊和監督作の放送禁止だろうね。夜中の二時だの三時に突然始まって、突然終わる。なんの説明もない。それも正直ドラマ版までで、映画になるともうこちらがそういう設定上で楽しむものになっている。
無名俳優だけで作り上げても、結局は虚構であって。予算がかからないから増えて、ヒットして、続編が出て、ゴミになる。
映画の感想。
タレントをメインに置き、バラエティで使うホラー映像を撮影しようと。ある母子が住む一軒家に行きます。雲水先生という凄腕の霊能力者を連れてきます。とんでもないことが起こります。少しだけゴア描写り。雲水先生ではどうにもならないので、師匠の龍玄先生のお力を借ります。
そこからもう、怒涛のジェットコースター的な展開で、謎が謎を呼び、忍び寄る恐怖感があり、めちゃくちゃ怖くて、僕の部屋の窓の外に干していた洗濯物が窓に当たる大きな音に、「のうェェェイ!」と叫び声を上げ……。
教科書のような作りになっている。入りの設定からそうだし、メインのあびる優氏が映画を観ている立場になっており、その時々の疑問を言ってくれるし、そんなめちゃくちゃおかしいこともないし、低予算でビシバシと作られているし、母親役の小山田サユリ氏はとても美しいし、あの龍玄先生を、「龍ちゃん」と呼び、数々の恐怖体験を、「面白い」と言うスーパー霊能力者NEO役の三浦涼介氏はめちゃ格好いいし……。
まあとにかく最初の十五分を観たら、ラストまで一気ですよ。
【よい点】
・モキュメンタリー入門映画として最適。
・母親役の小山田サユリ氏がとても美しい。
・謎が謎を呼ぶ、素晴らしくホラーな展開。
【悪い点】
・雲水先生の演技がオーバーすぎる。これは同監督作のノロイでも思ったことなんだよなぁ……。
・一人で観るとめっちゃ怖くて風呂に入れなくなる。
・感想文が長くなる。
【総合】
★★★★★