第七レツダンの第七ブログ

感想文をバシバシガシガシ書きます。

【読書感想文】 西村賢太/芝公園六角堂跡 【2017年刊行】

 四つからなる短編集。ひとつひとつ感想を書こう。

芝公園六角堂跡
 表題作。稲垣潤一氏のファンになった経緯、そして今では一緒に食事をしたりライヴに呼ばれるようになったことを述べる。そして今回呼ばれたライヴの場所の近くが、師と仰ぐ藤澤清造氏の終焉の地だった。そして北町貫多は師に対してのとある思いを抱く。

 いつもの藤澤清造話ではあるが、内容はこれまでとまったく異なる。そしてもう一つ、これまでとは少しばかり違う大きなポイントがあるが、それを述べると面白さが八割減になりそうなのでやめておく。
 読み終えた瞬間、単純に、「あ、面白かった」と思える。西村賢太氏に外れなしだと常々思っているが、私はやはり長編より短編のほうが好きかな、と。

追われなかった夜の彼方で
 芝公園六角堂跡から直接繋がった短編。稲垣潤一氏のことをJ・Iと表記し、作中の描写を変えてしまったという後悔と、師である藤澤清造氏のことを考える。

 表題作と同じで、いつもとは異なる。氏の師への思いは、そして自分が私小説を書く思いは、今も昔も変わらないのかどうか、について考えている。
 度々氏の小説に出てくる古書店店主の会話を使い、考える。
 表題作もそうだが、作中にはこれまで何度も書いてきた、田中英光のこと、藤澤清造のこと、某新人文学賞までのことを重ねて重ねて、いったい自分はどうなのかと追求している。そしてその重ね方は、読み手によっては、「またかよ」と思うかもしれないが、私はまったくそうは思わない。そう思うのであれば、私小説を読むのをやめたほうがいい。
 という私自身、そんなにたくさんの私小説を読んだわけではないのだが。


深更の巡礼
 様々な仕事が重なり忙しい中で、田中英光傑作選の校訂を続ける北町貫多。編集者の差別用語にうるさく、やたらとルビをふりたがるのに嫌気を感じる。
 古書店店主から、「十万円から三十万円で落とせるようなものにキチ◯イじみた入札をするな。もう有名だから、狙われ始めるぞ」と忠告を受け、いつもの北町貫多口調でてらてらと返す。
 校訂を続けていると、田中英光につぎ込んでいた二十代の頃を思い出し、楽しくもなってくる。

 三作続けて、二三年前のかなり最近の話。この短編集の前に出たのが、十代の頃を描いた蠕動で渉れ、汚泥の川をだったから、そういう意味で新鮮だったのかとも思う。
 面白かった。


十二月に泣く
 藤澤清造の生まれた地、能登七尾へ赴く。といってもその日は月命日ではないので、別の用事で。

 どういう感想文を書けばいいのか困ってしまう。住職関連で面白い話があるので、それを読むための短編かな、と。


 読み終えて思ったのは、短編集ではなく連作集だなということ。基本は表題作である芝公園六角堂跡に関連していて、そこから話を組み立てている。
 間違いなく氏の最高傑作だと思う