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【読書感想文】 中村文則/遮光

 面白いだのなんだのと絶賛すると、人間性を疑われてしまいそうになる小説。というかまあ、それは作者である中村文則氏も、あとがきで認めている。
 例えば、読書家の友人だったりに、「中村文則の遮光、面白かったよ!」とは言えない。
「これ知ってる?」と言われて、「ああ、なんか前に読んだことあるような、ないような……」とはぐらかすだろう。そういう小説。

 粗筋を説明しちゃうと、そんなに大した内容ではない。すごく悲しいな、と思うぐらいで。でも、数時間で読めたのは、薄い本だから、という理由だけではない。すごく読ませる文章、そして読んでいて楽しい文章だ。これを二十代前半で書いているんだから、驚き。

 徐々に色々なことが理解できてくる小説なので、感想文はちょっと難しいんだよね。説明するとネタバレになっちゃうし。

 まとめると、僕はこれを読んでいて、ドストエフスキーを読んでいる気分になった。でもそれは勘違いで、途中から、誰が書いた小説なのかわからなくなった。主人公の言動がそう思わせているというのもあるし、中村文則氏が書いた遮光という小説なんだ、ということが頭から抜けた状態で読んでいた。無色透明だ。しかしそれでいて、ものすごい衝撃を感じた。事実が判明し、それにかぶさるような事実が判明し、最後に流れていくところなんて、悲しすぎてもう読むのが辛かった。悲しさが恐ろしさへ変わっていった。現実感があった。僕だってこんなことが自分の身に起きたら、同じようになってしまうかもしれない。

 悲しくて暗くて怖い小説。でも最後は救われた。よかったな、とほっとしながら物語が終わった。

 自分にも、そして他人にも、嘘をついて別の誰かを演じなければ精神の安定を保てない。それってすごく大変なんだけれど、誰でもそうしてるような気もする。

 とても面白かった。でも僕は、この小説を周りの友人に勧めることはしない。だって嫌われちゃうもの。