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【読書感想文】 新潮二〇一六年八月号掲載 木村友祐『野良ビトたちの燃え上がる肖像』感想

 この作者の小説を読むのは、これが初めて。いつもの事ながら、知らないので期待に胸をときめかせながら読んだ。
 読み始めて、「あれ、ちょっと微妙だな」という感想を抱いた。冒頭から説明を結構入れているからだろうか。しかし読み進める。またもや、「あれ、ちょっと微妙だな」という感想を抱いた。そうか、ホームレスという題材に、興味が無いからか! そう考えれば、文學界受賞作の市街戦もそうだったな……と思いながら読み進めると、「あれ、ちょっと面白くない?」という感想を抱いた。成る程、さすがはプロ。

 読み進める内に、どんどんと物語に引き込まれていく。何よりも、文章が丁寧で読み易い。僕はホームレスの事についてあまり知らなかったので、ホームレスのルポタージュ的な感じで、楽しめた。

 木下がホームレスに転落してから、物語は広がっていく。木下のキャラ設定がとても良い。だから後半そうなったのか、と思った。

 ルポタージュだったものが、三村母娘が出たあたりで、物語は少しファンタジックというかサイエンス・フィクションチックになっていく。
親子でホームレスだとか、河川敷がホームレスで一杯になるだとか、しまいには独立国を宣言したりだとか。

 そこから、様々な問題定義がされる。僕はそういうのはどうでも良いと思っているので、現代の日本を云々、というのは、読みながら頭の中でスルーしていた。
 一つ面白かったのは、日本が不景気だというのを言ってはいけないという法律が出来たというところ。戦時中の日本みたいだな、と思った。

 木下はホームレス国の頭として、様々な活動を行う。そこには、そのキャラ設定が生きている。こういうキャラだから、こういう行動をするだろう、と思うのは、その作品の中でちゃんとキャラクターが生きて、息をしているという事。
 木下と柳さんで頑張りすぎて、他のキャラクターがちょっと弱く感じた。

 最後はどう決着つけるのかな、と思ったら、意外な落ちでびっくりした。

 一つ言わせて貰うなら、三村母娘のキャラをもうちょっと前面的にして欲しかったです。

 最後に。僕は、とある場所で、とある事情によりホームレスになりそうな人を知った。その人に僕は、「ホームレスになるぐらいなら、僕の家に住めば良い。ロフトが開いているから。しかし、喫煙者なので、そこは我慢して欲しい」と言った。それは僕も、東京に出る際に、友人に同じような事を言われて、救われたから。
 結局その人は、精神科のカウンセラーに相談し、生保を受ける手伝いをしてもらえるとの事で、何とかなりそうだと言った。

 この作品を読んで、ホームレスの問題への関心が強くなったり、木下のように立ち上がったり、世の中を良くしよう、だなんて動かされたわけではない。しかし、大した事は出来なくても、目の前でホームレスになりそうな人がいたら、僕はこれからも、「部屋に来ませんか」と言う。大きく動いている人からすれば、所詮その程度だと言われるかもしれないが、「出来る事を出来る範囲ですれば良いのではないか」という思いは、相変わらず僕の中にある。
 そして、この作品を読んで、その思いをより強めてくれたと感じた。