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【文芸誌感想】 すばる2016年8月号 高橋源一郎 『ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた』 第一話 感想

 新連載、どうだろうな、という不安を抱きながら読んだ。というのも、理由は二つあって、いつか、ソウル・トレインに乗る日までと非常時のことばを読んでいるんだけれど、どちらも何だか、真面目にかしこまって書いてやるぞ感が凄くて、いつもの高橋じゃない気がしていた。Amazonレビューなどを見ると、初期三部作の出来が良すぎて、それを期待して読んでいつも肩透かしを食らう、というレビューがあった。まるで1stと2ndばかりを絶賛される、weezerの様だ。
 僕はそうでもなくて、「悪」と戦うやミヤザワケンジ・グレイテストヒッツや優雅で感傷的な日本野球や恋する原発の方が好きだ。ちょっとブッ飛んだ感じ、というか。

 そしてもう一つの不安要素は、最近になってちょっと発言が煩くなりすぎている。ぼくらの民主主義なんだぜ、とか、反原発だとか、SEELsと組んだりだとか、もう、ええっちゅうねん、と。しかも、連載のタイトルが、ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた、だから、あー、はいはい、またそういうのですか、よくも飽きませんね、と。

 しかし、読み終えて、そういう不安は減少した。全部が消えたわけではない。内容は、子どもたちが『くに』を作るために議論する話と、園長先生のちょっと変わった話を交互に。
 冒頭から面白い。マジ、という言葉を使ったり、マインクラフトを出したり、プリキュアだとか出して来たのには、うわー、やっぱり、高橋源一郎っていいなぁ、と思った。もう六十代なのに、アンテナを張っている。そして何より、すらすらと読み易い! やっぱり高橋はこうでなくちゃ! 後、「悪」と戦うに続き子どもが主人公なので、ちゃんと子どもを描けているのも、やっぱり凄いと思った。

「伝説の七人」だとか、『くに』とうのはどういう成り立ちで作られるのかだとか、園長のハラさんが園長室を持たずに受付や廊下や体育倉庫で過ごしているだとか、「悪」と戦うのランちゃんと同じ名前の子どもが主人公だったりだとか、終盤、みんなでそれぞれ国旗を作って持って来たりだとか、短い中に色んな面白くて気になる要素をブチ込んでいて、読んでいて全く飽きない。
 アッちゃんの持参した国旗にポエムが書いてあったり、ランちゃんの国旗には日記のようなものが書いてあったりしたところは、くすりときた。
 
>「日の丸」の旗を誰も持ってなかったからだ。学校にもないし。

 いや、こういうのは、いいよ。もう、煩い。