読書感想ブログ

感想文をバシバシガシガシ書きます。

【読書感想文】 北尾トロ/危ないお仕事! 【2006年刊行】

【概要】

 裁判傍聴記で有名な北尾トロ氏の仕事ルポ。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 超能力セミナー講師、タイの日本人カモリ屋、彼らは巧みな話術で人々をとりこにする。
 スレスレ主婦モデル、ダッチワイフを創る人形師、彼らは男たちの欲望に火を点け、お金に換える。
 警察マニアは無線を傍受し勝手に追跡、汁男優は“発射"に職業人のプライドをかける――。
 知られざる“仕事師"たちの実態が、今ここに明かされる。著者による、新聞拡張団・冷や汗体験記も収録。

【感想】

 おもしろかった。とはいうものの、実際に著者がその仕事に体験した話は臨場感があってとても面白いのだが、ただインタビューをしただけの話は物足りなさを感じた。

 新聞拡張団の体験記が一番おもしろかったかも。というのも僕も十代の頃健康食品の訪問販売を数ヶ月だけやっていたので、「ああわかるなこれ」というポイントが多かった。
 タイの日本人カモリ屋はとても恐ろしい。超能力セミナーは、なんだかみんな幸せそうでいいな。警察マニアは趣味を生きがいにしていて微笑ましい。家族の理解もあるし。
 万引きバスターと探偵は読み物としてとってもよかった。

 福満しげゆき氏の一頁漫画もとても気に入った。


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【読書感想文】 伊坂幸太郎/オーデュボンの祈り 【2000年刊行】

【概要】

 言わずと知れた伊坂幸太郎氏のデビュー作品で第5回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。
 江戸以来外界から遮断されている“荻島"には、妙な人間ばかりが住んでいた。
 嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。
 未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?


【感想】

 伊坂幸太郎氏の小説を一番最初に読んだのは、アヒルと鴨のコインロッカーだった。十年前かな、映画版を観て感動して原作も読んで感動した。それからちらちら読んでる。

 伊坂作品といえば、魅力的なキャラクター、心地よい会話、終盤の伏線回収。それはデビュー作のオーデュボンの祈りでも味わえる。
 優等生なんだよなぁ。よくできてるし面白いしヒットも飛ばして。終盤の伏線回収は本当に見事だった。さまざまな伏線がごそごそっと回収されて読んでいて口笛を吹きたくなった。やるねぇ~、ヒュウ。

 まあ口笛は吹けないんであれだが、クローズド・ミステリな味もあり、完璧な悪人も出てきてスリリングで先の見えない展開は読んでいてとても楽しかった。

 ……が、ひとつ言わせてもらうとすれば、中盤ちょっとだれるよね。ちょっと長い。とはいえこれでも文庫化の際に150頁ほど削除したようだ。
 伊坂作品はブック・オフでもよく見かけるし、手軽に入手できて読みやすい文章で楽しいエンタメなので文句なしだよね。


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【読書感想文】 村上春樹/約束された場所で underground 2 【2001年刊行】

【概要】

 永遠のノーベル文学賞候補村上春樹氏の、オウム真理教の信者と元信者八人へのインタビュー集。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 癒やされることを求めた彼らが、なぜ「サリン事件」という救いのない無差別殺人に行き着いたのか。
 彼らはなぜ現世を生きぬくことができなかったのか? どこに夢の地を求めようとしたのか?
 信者、元信者たちへの徹底的なインタビューと河合隼雄氏との対話によって、現代が抱える心の闇を明らかにするノンフィクション。

【感想】

 地下鉄サリン事件の被害者のインタビュー集であるアンダーグラウンドの対になるもので、オウム信者のインタビュー集なのだが、結局はまあアンダーグラウンドと同じパターン。
 人となりを紹介して、生い立ちからオウム真理教でなにをしていたかを述べて今なにをしているかで一人のインタビューが終わる。

 アンダーグラウンドと同じで最初は興味深く読んでいた。でも途中から、どれもこれも同じパターンだなと思い始めると退屈に感じてしまった。

 僕は根本的に宗教というものに対してよい感情を持っていないから、宗教的なことを言われると興ざめしてしまう。

 河合隼雄氏には興味が無いので、対談は読んでません。


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【読書感想文】 村上春樹/遠い太鼓 【1993年刊行】

【概要】

 村上春樹氏の紀行文。1986年の秋から1989年の秋までの3年間、主にイタリア・ギリシアなどヨーロッパに滞在した日々が綴られている。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 ある朝目が覚めて、ふと耳を澄ませると、何処か遠くから太鼓の音が聞こえてきたのだ。ずっと遠くの場所から、ずっと遠くの時間から、その太鼓の音は響いてきた。
 ―その音にさそわれて僕はギリシャ・イタリアへ長い旅に出る。
 1986年秋から1989年秋まで3年間をつづる新しいかたちの旅行記。


【感想】

 やっぱり紀行文はいいね。旅行した気分になって、読んでいてとても楽しい。

 でもさぁ……ちょっとボリュームありすぎ!
 雨天炎天や辺境・近境ぐらいのボリュームにしてほしかった。たとえば1986年、1987年、1989年で分冊するとかさ。

 三分の一ほど読んで数ヶ月放置して、最初から読み直したわけだが、何ヶ月かかっただろうか。アンダーグラウンドもそうだけれど、もうわかった! お腹いっぱいだ! という気になる。
 やっぱり分冊してほしいな。

 内容に関しては特に述べるものもないだろう。春樹氏の紀行文だ。


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【読書感想文】 村上春樹/騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編 【2017年刊行】

【概要】

 言わずと知れた村上春樹氏の七年ぶりの長編小説。


【内容紹介】 (新潮社HP引用)

 その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入り口近くの、山の上に住んでいた。
 夏には谷の奥の方でひっきりなしに雨が降ったが、谷の外側はだいたい晴れていた……。
 それは孤独で静謐な日々であるはずだった。騎士団長が顕(あらわ)れるまでは。


【感想】

 おいおいおいおい、どうした村上春樹!?
 こんな爽やかでハッピーな最期っていったいどうしたんだ?

 主人公が云々考えているときは退屈だが、免色が出てくるとアクセル踏みっぱなしでとてもおもしろい。
 秋川まりえはねじまき鳥クロニクルの笠原メイほどの魅力はないなあと思いながら読んでいたが、終盤の展開で自分の中でとても可愛くなった。

 読んでいる間にいろいろと思ったことはあったんだが、時間をかけてのんびり読んでいるとほとんど忘れてしまった。三箇所ほど読むに耐えなくてスキップした部分はあったが、まあ基本はいつもの春樹さん。

 ユズに関しては、ジュリーのカサブランカ・ダンディばりにひとつふたつ張り倒せよと思っていたが、まあこういう決着でよかったのかなと。

 氏の小説では初めての試みとなるイベントがいくつかあったが、そこには驚かされた。まあいろいろと心境の変化があったんだろうな。

 なんだかんだと言っても、結局のところとてもおもしろかった。ほとんどのことについてきっちりと決着をつけた上で終わらせているし。文句は上述した読むに耐えなくてスキップした部分をどうにかしてほしかった。
 まあそれの意図するところは理解はできるが、それでもつらかった。


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【読書感想文】 奥田英朗/町長選挙 【2009年刊行】

【概要】

 直木三十五賞作家奥田英朗氏の精神科医・伊良部シリーズの第三弾。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 町営の診療所しかない都下の離れ小島に赴任することになった、トンデモ精神科医の伊良部。そこは住民の勢力を二分する町長選挙の真っ最中で、なんとか伊良部を自陣営に取り込もうとする住民たちの攻勢に、さすがの伊良部も圧倒されて……なんと引きこもりに!?
 泣く子も黙る伊良部の暴走が止まらない、絶好調シリーズ第3弾。


【感想】

 実在の人物をモデルにした三作と離島での選挙の話の四話。
 オーナーはナベツネ、アンポンマンはホリエモン、カリスマ家業は黒木瞳

 最期はハッピー・エンドで終わるし展開も面白いのでエンターテイメントど直球なわけだが、まあもうネタ切れかなと。つまらないわけではない。面白い。一日で読み終えた。伊良部とマユミちゃんだけでキャラクターが立ちまくってるのに、そこに一癖も二癖もある患者が物語を引っ張って読むのが止まらない。

「ええ話やな~」と暖かい気持ちになる結末もいいね。

 しかし、前作や前々作とは毛色が違っている。それを期待すると肩透かしを食らうかも。


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【読書感想文】 長江俊和/出版禁止 【2014年刊行】

【概要】

 言わずと知れた放送禁止シリーズの長江俊和監督のフェイク・ドキュメンタリー小説第一弾。


【内容紹介】 (文庫本裏表紙引用)

 著者・長江俊和が手にしたのは、いわくつきの原稿だった。題名は「カミュの刺客」、執筆者はライターの若橋呉成。
 内容は、有名なドキュメンタリー作家と心中し、生き残った新藤七緒への独占インタビューだった。
 死の匂いが立ちこめる山荘、心中のすべてを記録したビデオ。不倫の果ての悲劇なのか。なぜ女だけが生還したのか。
 息を呑む展開、恐るべきどんでん返し。異形の傑作ミステリー。


【感想】

 読ませるねぇ。ルポルタージュという設定のカミュの刺客が完全に小説なのはまあ置いておいて、当事者以外の関係者にもインタビューをし、徐々に真実に近づいていく様は読んでいてとてもスリリングで先が気になって仕方がない。

 そういう設定を把握した上で読んでいたのだが、若橋と七緒の間にべつの感情が現れ始めたときにはもうそういうのはどうでもよくて、二人はいったいどうなってしまうのかということが気になって気になって、読むのがかったるいぐらい頁をめくり続けていた。

 でもなー。終盤の展開、息は呑むけどさぁ、どんでん返し? すごーく強引じゃない? しかもよくわかんなかったから、これから解説読むわ。あと今月出版禁止2出るってね。とりあえず買って読むかな。掲載禁止も気になるね。

 追記。性行為のあとのこの二行は上手いなと思った。

 思わず、右手を鼻先に寄せる。
 指先に七緒の残り香が、かすかに漂っていた



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