読書感想ブログ

感想文をバシバシガシガシ書きます。

【読書感想文】 田中慎弥/切れた鎖 【2010年刊行】

【概要】

 共喰いで第146回(平成23年/2011年下半期)芥川賞を受賞した、言わずと知れた作家の二つ目の作品集。これ自体も第21回三島由紀夫賞を受賞しており、収録作である蛹では第34回川端康成文学賞を受賞している。


【感想】

 噂には聞いておりましたが、なんでか今まで一つも読まなかった作家。まあ薄いし、失敗しても痛くないなというわけで読み始めた。

 「蛹」は読み始めてすぐに興味がないと判断し読まなかった。しかし読書メーター等々で感想を見ると、蛹が高評価だった。まあ川端康成文学賞を獲ってるし。でも僕からすれば、「昆虫を延々描写されてもなあ」というわけで。

 「不意の償い」は、途中から妄想の世界にぐんぐん入っていって、あ、こういうの書く人なんだなと思った。

 しかし、表題作の「切れた鎖」にはやられてしまった。うわああああっと持っていかれた。思いの外衝撃の度合いが強くて、より衝撃を受けたくて貪るように読んだ。

 で、読み終えて部屋でぼんやりしながら飯食ってさあ感想を書くかと頁を開いたわけだが、いったいなににうわああああっと持っていかれたのか、いったいなにの衝撃の度合いが強かったのかさっぱりわからない。いや別に大したことなかったよなと思うわけだが、いやあ読んでいる最中はなんだか凄かったんですよね、という感じで自分でもよくわからない。

 でもまあなにかを感じたんだろうね。よくわからんけどさ。

 代々続いてきたということは代々守ってきたというわけで、自分を含めた様々なものを犠牲にして。そのあたりじゃあ当然名も知れていて、一目置かれていて。でもそういうのもいつかは全部無になっちゃうんだなあ。

 「しっ、しっ」


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【読書感想文】 片岡義男/と、彼女は言った 【2016年刊行】【読了断念】

【概要】

 御年七十八の片岡義男氏の群像での連載をまとめた短編集。


【感想】

 初めて片岡義男氏の本を手にとってみました。なんだか70年代に若者から絶大な支持を得たとかで、とても期待していました。しかしその期待は見事にブチ壊されてしまったのです。


 結果から述べまして、またもや読了を断念せざるを得ない結果となってしまいました。だってきついよこれは。最初の「おでんの卵を半分こ」を読み終えて、70年代とか80年代に書かれたものを再販したものなのかなと思った。

 だって、あまりにも古臭すぎるんですもの! 昭和の香りがするわ! 

 そしたらなんと、2015年に書かれたものだった。おったまげー。

 無理矢理頭のなかで「これが片岡義男か。うーむ、なんだか都会的な作品だ」なんて思いながら読んでいたが、三作目の表題作「と、彼女は言った」の序盤でギブ・アップです。

 だって、全部おんなじやもん。売れない作家の主人公と女が出会って「小粋」で「歯の浮くような」会話を決めて酒を呑むだけ。少なくとも僕が読んだ三作目まで全部同じプロット。

 キッチンじゃなくてキチン。
 クレジットカードじゃなくてクレディットカード。
 インターネットじゃなくてインタネット。

 というこだわり。


 う~ん。なにもかもが古すぎる。今平成30年でっせ、2018年でっせ、21世紀でっせ。


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【読書感想文】 中島らも/ロバに耳打ち 【2013年刊行】

【概要】 (ジャケ裏引用)

 昨日、酒を一升飲んでしまった。ぶ厚いイカの一夜干しが「お酒がほしいよう」とおれの左腕を引っ張るのだから、仕方ない。「記憶の中島」と呼ばれた異常な記憶力のおれも、今では昼に喰った飯すら忘れる。両親のこと、幼少期のこと。ゆる~い中に懐かしい匂いがする、らもエッセイ。(講談社文庫)


【感想】

 さて、中島らも氏のエッセイである。エッセイなのである。外で読んでいたのだが、他人のことなんて気にせずにのめり込んで笑って楽しんだ。

 まあ、他の本と内容が被っていることもないこともないわけであるが、まあそれでも面白いからよいのである。


 うーん、なんだか最近は作家が固定されてしまっているなあ。できるだけ様々な種類の作家の本を読みたいと思っているのだが、「面白い!」となるとついその作家で追いかけてしまう。

 で、今ちょっと冒頭を読んだ某氏の某作品、とんでもなくつまらなくて積ん読棚に戻したくなったのであ~る。


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【読書感想文】 高橋弘希/日曜日の人々 【2017年刊行】

【概要】

 個人的に新作が待ち遠しい作家の一人で、外れのない作家の一人。

 主人公である大学生の航と同い年の従姉である奈々が自死し、死後手紙が届くところから始まる。航と奈々は最後まではいかないものの、恋人のような関係だった。
 航は生前の奈々が参加していた、精神疾患の人たちが集まる自助グループ「レム」に通い始める。レムの代表もまた次々と自死し、会員は拒食症、窃盗、自傷などの嗜好を朝の会で発表する。時にはメンバーで仲良くキャンプなどにも出かける。


【感想】

 高橋弘希氏の小説を読む時にいつも思うことだが、よくまあここまで調べ上げたな、と。僕みたいなプロの(?)精神疾患患者が感心してしまった。序盤になかなかハードなリスト・カット描写があるが、こいつがまた素晴らしく気持ちが悪い。いやあな気持ちにさせられる。実物や写真で見るのは当然きついが、文章でここまで嫌悪を感じられる描写が素晴らしい。僕なんて採血されるところを見るのすらも無理な弱い人間なので、この描写でちょっと挫折しかけた。それほどにいい。

 度々出てくる専門的な用語や行動も正確でとてもいい。リスト・カットした後に止血にはラップがいいんだよなあ。
 人からすればまったくもってどうでもいいことで簡単に自死してしまう、というよくあることがさらりと入っているのもいいね。

 文章も相変わらず丁寧で地に足の着いたしっかりとしたもので、読むのが止まらない。救いのない話のあいだあいだに微かな希望が描かれる構成なので、読んでいてずっとつらいというわけでもない。

 精神疾患患者もそうでない人にも読んでいただきたい一冊だと思う。


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【読書感想文】 円城塔/オブ・ザ・ベースボール 【2008年刊行】

 昔から気になっていた円城塔のデビュー作。

 

【感想】

 

 表題作の「オブ・ザ・ベースボール」は、序盤のみ楽しめた。

 田舎の村に一年に一度人が降ってくる。原因は不明。

 という設定はとても引き込まれるし、ジョークを交えた文章は笑えてとてもよい。

 

 ……が、それだけで80頁も読むのはとてもつらい。とくになにも起こらず、ただ主人公の独白が延々と続く。途中で飽きてしまったが、なんとか頑張って読んだ。

 

 ひたすら苦痛なのを頑張って読んだだけで、面白くもなんとも思わなかった。とはいえつまらないとも思わなかったので、感想の書きようがない。

 達成感のようなものもなかったが、開放感はあった。

 

 「オブ・ザ・ベースボール」はなんとか読み終えたが、「つぎの著者に続く」を読み始めて、もう無理だと思った。これも面白い面白くない以前の問題だった。書いてあることにまったく興味がわかない。日本語が書かれてあることはわかるのだが、それがいったいなにを表しているのかがさっぱりわからない。

 

 「どんなものでも最後まで読みきる」というルールを自分に課せていたので、それが守れなかったことだけが心残りだった。

 

 なので、「最後まで読んでないのに感想書くんじゃねえよバカ!」と罵ってください。

 この二作品を楽しめるスキルを持っていなかった。本当に申し訳ないという気持ちでいっぱいだ。

 

 

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【読書感想文】 中島らも/僕に踏まれた町と僕が踏まれた町 【1997年刊行】

  さて、中島らも氏のエッセイなのである。高校から大学卒業までの「無茶苦茶やってた頃」の話。それがまた面白くて、笑いながら読んでいた。

 余談でありますが、読書記録を見ると2011年に一度読んでいた。七年前だから、「死」から逃げるために必死になってひたすらアルコールを摂取していた頃だろうか。
 以下、感想を引用。

 一気に読みました。「ただ、こうして生きてきてみるとわかるのだが、めったにはない、何十年に一回くらいしかないかもしれないが、「生きていてよかった」と思う夜がある。一度でもそういうことがあれば、その思いだけがあれば、あとはゴミクズみたいな日々であっても生きていける。」ぐっときました。

 いやあ、本当にそうだよね。別に死ぬのは悪くないとは思うし何度かチャレンジしてみたこともあるけれど、今思うと本当に「あの時死ななくてよかった」の一言に尽きる。


 氏の破天荒でぶっ飛んだ学生時代を読みながら、「自分はこの歳のころどうだったかな?」と考えたりしていた。度合いは違えど同じようなことをしていた。


 前述した文もよかったが、この一文にもとても勇気づけられた。

「だれでも夢がつかめる。才能よりもむしろ持続する能力があればの話だが」


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【映画感想文】【洋画】 ヴィジット/M・ナイト・シャマラン 【2015年公開】

 『ヴィジット』(原題: The Visit)は、2015年製作のアメリカ合衆国のホラー映画。M・ナイト・シャマラン監督・脚本・製作。


【あらすじ】Wikipedia引用)

 シングルマザーに育てられている15歳の姉ベッカと13歳の弟タイラーは、祖父母から休暇を利用して遊びに来ないかとの誘いを受ける。
 2人はペンシルバニアの祖父母の家で1週間を過ごすことになる。初めて対面する祖父母に最初は緊張したものの、優しい祖父母と美味しい料理に2人は大喜びし、すっかり意気投合する。
 ただ、祖父母からは、「楽しい時間を過ごすこと」、「好きなものは遠慮なく食べること」、「夜9時半以降は部屋から絶対に出ないこと」という3つの約束を守るように言い渡される。
 しかし、夜中になると、家の中には異様な気配が漂い、不気味な物音が響き渡る。それに恐怖を覚えた2人は、開けてはいけないと言われた部屋のドアを開けてしまう…。


【感想】

 うわああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!

 シャマランが久しぶりに本気出してきたあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!

 メチャクソこえええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!

 いや、これ、マジで怖い。よくある驚かす系じゃなくて、恐怖が忍び寄ってくる。祖父母がナチュラルにおかしくて、幼い姉弟のパニック感が伝わって本当に怖い。それにPOVという撮影方法が生きている。

 ホラーでもあり、ヒューマン・ドラマでもある。様々な意味で感動させられた。祖父母の演技も素晴らしいし、幼い姉弟もいい。母親も色気があってよかった。


 いや~~~~~しかし……。

 深夜別人になって家を徘徊するディアナ・デュナガン演じる祖母、「明日仮装パーティーがあるから」と言って正装しだすピーター・マクロビー演じる祖父――

 これ以上言うとネタバレになるからやめておくが、部屋を真っ暗にして一人で観るのはおすすめしない。こうやって感想文を書いている背後から「カラカラカラ」という異音が聞こえてきたのでビクッとなったが、ただハムスターが走り回っているだけだった。



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