感想文

感想文をバシバシガシガシ書きます。

【読書感想文】 村上春樹/走ることについて語るときに僕の語ること 【2010年刊行】

 タイトルのそのまま、村上春樹氏が走ることについて語ったもの。2005年から2006年にかけて、なぜ走るか、どんな練習をしたか、どんな大会に出たか、そしてどう思ったかについて書かれている。

 年齢を重ねるにつれ、以前は難なくクリアできていたタイムをオーバーするようになってしまう。練習をいくらしても、体調にどれだけ気を使っても、老いには勝てないという事実に打ちのめされてしまう。
 というような悲しくて切ない内容から始まる。

 作者も書いている通り、走ることの素晴らしさを語ってランナーを増やしたいというような思いは感じられない。ただ、作者本人が走ることについて語っているだけ。それなのにとても面白い。

 初めてのフル・マラソンの部分や100キロ・マラソンの部分なんて、読む手が止まらなかった。この辛い中走りきれるのか? とハラハラ・ドキドキしながら読んだ。

 包み隠さず正直に全てを述べているから、楽しく読めるのだろう。駄目で情けない部分も存分に出す。いい格好はしない。でもストイック。ありのままの春樹氏が、ありのままの走りを書いた。そしてストイック。ただそれだけ。ただそれだけなのに、本当に面白かった。

 正直なところ、僕も体重が落ちて足の爆弾が解除されたら、定期的に走ってみようと思った。僕自身も春樹氏と同じく、団体でやるより個人でやるほうがのめり込める質だから、近所を黙々と走りたい。

【読書感想文】 高橋弘希/スイミングスクール 【2017年刊行】

 指の骨に続き、高橋弘希氏の小説を読んだのはこれで二作目。外れないな、という印象。しかし文芸誌で読んだ時は、ですます調が受け付けなくて読むのをやめた記憶が。

 物語の核心に近づくと逸らせて別の角度からの物語が始まり、帯に書いてある、「私と母の間には、何があったのか――。」という謎が一向に解けない。だから気になって頁をめくる手が止まらないし、文章も描写も物語もすべて緻密に作られているのですぐに読み終わってしまった。

 指の骨もそうだったが、読んでいてとても心地がいい。主人公の娘であるひなたちゃんがとても可愛い。戦争を体験していないのにあれだけの戦争小説を描いて、結婚して娘がいるわけでもないのにこんなに上手い母と娘の関係性を描いて、高橋弘希氏は一体なんなんだと。どれだけの作家なんだと。腹が立つぐらい上手いわと。ふざけんじゃないよと。

 読み手の想像力が爆発するぐらい、頭のなかに描写が浮かび上がる。それがあって、全体的に漂う切なさに胸が締め付けられる。特に終盤にあるカセットテープを聴くところ。父親に向けた、インタビュー形式のもの。もうこの無邪気な子ども時代には戻れないのだな、母も亡くなって娘が成長して、同じようなことが繰り返されていくのだな、と思うと、泣きたいくらいに切なくて悲しくなる。

「お前なんて堕ろすつもりだった」と母から言われてショックを受けたのに、娘の頬を思い切りはたいてしまう。そういうものか。


 短編である短冊流しは、自分の不貞によって夫婦生活が破綻し、下の子供だけ嫁が引き取っていったシングル・ファーザーの話。その娘が突然泡を吹いて気を失い、それからずっと病室で眠り続けている。こちらからはどうしようもない状態に陥った娘をただ見守ることしかできない。つらいね。
 読んでいる途中、中村文則氏の小説を読んでいるような気がした。文体が似ているのだろうか。

 最新作である日曜日の人々を購入したので、読むのが楽しみだ。

 芥川龍之介賞には毎回候補になるだけで受賞しないので、そろそろ受賞してもらいたいなと思った。

【読書感想文】 元少年A/絶歌 【2015年刊行】

 神戸連続児童殺傷事件、通称酒鬼薔薇聖斗事件を起こした元少年Aの手記。僕は兵庫県出身で、この事件が起きた時は十歳前後だった。事件が起きて犯人が捕まった後も学校も地域もかなりピリピリしていて、集団での登下校の際、父兄ががっちりとついていたことを覚えている。

 そういえば、冤罪説も騒がれていた。

 これまでずっと沈黙していた犯人が書いた手記とあって、言い方は悪いが、かなり期待して読んだ。そして、その期待は百パーセント裏切られることとなった。


【問題点】
・第一部と第二部の文章に、あまりにも差がありすぎる。

 第一部は、事件を起こして逮捕され医療少年院での暮らしが書いてある。殺人シーンが気持ち悪い。ハセ君の首を切断して校門に飾るところなんて、「月光の愛液」だの「蠢動」だの「游ぐ」だの「下界の処女膜」だの、「雨は空の舌となって大地を舐めた。僕は上を向いて舌を突き出し、空と深く接吻した」だの、「打擲した」だの、「寂寥の谷」だの、「雑駁な欲望の廃棄場」だの、殺人シーンを芸術にしたいのだろうという気持ちがとても伝わってきた。


・本名を晒さず、元少年Aという名前で出版したこと

 自分の思いや歩んできた道を文章にしたい、そうしないと精神が崩壊してしまう。だから被害者の家族に無断で出版したことを許してくれ。無機質で生きることをなんとも思わず、挙げ句の果てに二人の命を奪った自分が、生きることの素晴らしさに気づいた。
 小説を書いたり、クリエイティヴなことをしたい。

 と書いてあるが、元少年Aという筆名である限り、自分は守られた安全な世界でのうのうと生きていることは放棄しないが、自分の思いや自分が歩んできた道を文章にしたいなんて、ただのマスターベーションでしかない。


・第二部の治療後の生活に反省が感じられない

 「罪の意識に苛まされて暮らすの大変! 誰かに守ってもらうの嫌だから自立する! でも就活厳しい! やっと仕事に就いても理不尽なことばかり! 人と仲良くなるの嫌だから職場でもコミニュケーションしないから嫌われる! 両親や兄弟ごめんなさい! あの二つの事件思い出すと吐きそうになる! 辛い! 毎年遺族に手紙送ってたら、徐々に許して貰えてる!」

 ふざけるなと思ってしまう。


【よかった点】
 元少年Aの家族の思いには涙が出た。「なにがあっても、お前は俺の子だ」、「Aが兄でよかったと思っている」など、元少年Aの視点から見ても涙してしまうし、親や兄弟からの視点から見ても涙してしまう。治療が終わった後、家族でまた暮らさないかと言われたことに元少年Aが反対した理由にも涙してしまう。が、問題点にも書いた通り、元少年Aは心の底から反省しているわけではない、ということが露呈してしまっているので、そういった家族からの温かい言葉も、元少年Aにはなんの意味もなさなかったように思えた。

【映画感想文】 チャド・スタエルスキ/ジョン・ウィック R-15【2015年公開】

 なんの無駄もなく、始まりから終わりまで一気に駆け抜けて、主演のキアヌ・リーヴスの格好よさがつまりにつまった、素晴らしい映画だった。

【概要】
 かつて裏社会にその名を轟かせた凄腕の殺し屋ジョン・ウィックは、5年前に最愛の女性ヘレンと出会い足を洗う。平穏な結婚生活を送るジョンであったがヘレンが病で亡くなり、生きる希望を失う。だが、ヘレンは残される夫を心配して仔犬を手配しており、その存在がジョンの新たな希望となりつつあった。その矢先、ジョンの愛車フォード・マスタング・マッハ1を狙った強盗に家を襲われ、車を奪われただけではなく仔犬も殺されてしまう。大事なものを再度失ったジョンは、復讐のため、裏社会へ戻ることを決意する。
 Wikipedia参照。


【感想】
 キアヌ・リーヴス演じるジョン・ウィックが寡黙でスマートで格好いい。確実に頭打ち抜いて殺す容赦なさもいい。序盤からバスバス、バスバスと人を殺しまくりで、あまりの無双っぷりに笑ってしまった。ナイフがじわじわと刺さるシーンがいくつもあったので、そこは少し目をそらした。R-15だからね。

 登場人物のほとんどがスマートかつ冷酷非道な残虐者で、特にウィレム・デフォー演じるマーカスが素晴らしい。サム・ライミスパイダーマンでゴブリンを演じたあの方。

 でも、エイドリアンヌ・パリッキ演じるミズ・パーキンズはなにがしたかったのだろう?

 吹き替えで観たわけだが、ミカエル・ニクヴィスト演じるウィゴ・タラソフの吹き替えが堀内賢雄氏で、どうも僕はフルハウスジェシーおいたんの声を聞いて育ってきたもので、落ち着いた冷酷非道なボスの吹き替えを見事に演じていて、やっぱり声優の方ってすごいなと思ったね。


 こんなのもう、文句なしのパーフェクツな映画だわ。なんの文句もないしマイナス・ポイントも一つもない。

 マトリックスでは髭の剃り後ですら格好良かったキアヌ・リーヴスが、もさっと生やした髭面ですら格好良いキアヌ・リーヴスになっていた。やっぱりキアヌ、格好よすぎだわ。すごい。

【読書感想文】 文村上春樹・絵安西水丸/村上朝日堂超短篇小説 夜のくもざる 【1998年刊行】

 シュールな内容の掌編が三十六編収録した掌編集。意味とか考えちゃ駄目で、感じるままに読むのがいいでしょうな。だって本当に意味不明なんだもの。小説も、絵も。

 例えば……と挙げるとネタバレになってしまうし、村上春樹氏も言っているように、ライトな物語に安西水丸氏のライトなイラストが載っていて、すぐに読み終わると思う。

 残念ながら安西水丸氏は鬼籍に入られたので、このコンビのものはもう読むことは叶わないわけだが……。

【読書感想文】 歌野晶午/葉桜の季節に君を想うということ 【2007年刊行】

 読みやすい文章で複数の話を混ぜながら進めるため、先が気になって仕方がなく、二日程度で読み終えてしまった。こういうのが徹夜本というんだな。

 まぁ、なんというか、とてもよかった。スリル満点で、これぞミステリだね。

【映画感想文】 コーエン兄弟/ノーカントリー 【2008年公開】

 恥ずかしながらなんですけれども、コーエン兄弟の映画はこれが始めてでした。監督自体の名前は知ってるし、この映画のタイトルも知ってるし、積読棚にはコーマック・マッカーシーの血と暴力の国がなぜか並んでいる。なんで並んでいるんだろう。おそらく、ノーカントリーを調べた時に原作があると知って、映画を観る前に原作を読もうなんてことを思ったんだろう。いつ買ったのかもわからないし、いつから棚に並んでいるのかもわからない。


 この映画はまぁ簡単に言っちゃうと、ハンティングを楽しんでたジョシュ・ブローリン演じるルウェリン・モスというベトナム帰還兵のおじさんは、偶然殺人現場に遭遇してしまう。どうやら、麻薬取引をしていたがなんらかのトラブルがあり、殺し合いをしてしまったようだ。なんとそこには大金が手付かずで残っており、モスはそれを持って帰る。

 そして、ギャングから金の発見を請け負った殺し屋ハビエル・バルデム演じるアントン・シガーとの、命を賭けた追いかけっこが始まる。


 常に緊張感のある追いかけっこで、銃はぶっ放すわモスは嫁が心配だわシガーはばかすかと人を殺しまくるわ、ひりひりする。シガーが持っている武器が家畜銃というもので、空気圧で鍵穴を撃ち抜く。時代設定が八〇年代なので古臭いファッション。モスは口ひげ生やした色気のあるダンディで、シガーはマッシュルーム・カットの無表情で冷徹な殺人鬼。


 なんとなくで観ていても面白い映画だろう。様々なカットに情報がてんこ盛りなので、逃さず目を凝らして観るのも楽しい。無駄が一つもない。常に緊張させているというわけではなく、トミー・リー・ジョーンズ演じる保安官エドトム・ベルとその助手の笑いを誘うやり取りが間に入って緩和させている。


 でもさぁ……ラスト、なに? 解説とか読んだけれど、いまいち釈然としない。解釈なんだろうね。誰かと一緒に観て、観終わった後にああだのこうだの言い合うのが楽しい映画。まあ僕は一人で観ましたがね。


【モスの嫁役のケリー・マクドナルドがスーパー可愛い度】 ★★★★★
【今のケリー・マクドナルドも色気ばっちりだよね度】   ★★★★★
コーエン兄弟の映画、これから色々観ようと思った度】  ★★★★★

【総合】 ラストがなぁ……。              ★★★★☆