第七レツダンの第七ブログ

感想文をバシバシガシガシ書きます。

【読書感想文】 中島らも/獏の食べのこし 【1993年刊行】

 んもう。あまりに面白いから、立て続けに読んじゃったじゃないの。読んでいてアタシ思ったんだけど、このエッセイ読んでるあいだ、アタシずっとどこかにいたわ。わかりにくいかしら。ちゃんと説明するわね。

 エッセイというか結局のところ文字を読んでるわけなんだけれど、それは例えばドトールだったり家の布団の中だったり、場所はさまざまなわけで。でもそのあいだねぇ、アタシずっとどこかにいたのよねぇ。どこかで漂ってたのよ。これはどういうことかしらねぇ。小説読んでいてもそういうことはなかったわね、おそらく。おそらくだからあるかもしれないし忘れただけかもしれないけれど、これはちょっと不思議な体験だったわ。何度も経験してることなのかもしれないけど。

「あーん、わかるー」
「たしかにそうよねー」
「アハハ、ちょーウケるー」
「なんだか感動しちゃったわ」

 一つのエッセイを読み終えて、こう思うわけよね。でも読んでいる間は、どこか別の場所を漂っていたわ。アタシ気づいちゃったんだけど、優れたエッセイっていうのは、読者をどこかに連れて行ってくれるのかもしれないわねぇ。

 ま、帰ってこられるかどうかはわからないけれど。

 兎にも角にも、最後の「失恋について」は要チェックしておいたほうがいいわよ。ま、いまさらだけれどね。


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【読書感想文】 吉行淳之介/原色の街・驟雨 【1966年刊行】

 この本が初吉行淳之介でありまして、しかもこれまで第三の新人は一切読んだことがありませんで、期待と不安がないまぜの状態で読んだわけでやんすが、まずひとつ言えることはですね……文章旨すぎない?

 文章のお手本を読んでいるかのよう。芥川龍之介賞受賞作の「驟雨」から、特に気に入った一文を抜き出してみよう。

「今度お会いするまで、わたし、操を守っておくわね」
 とささやくと、微笑みを残して急ぎ足に去っていった。取残された彼の心に、このときはっきりと、女が固有名詞となって這入りこんできた。

 

「どうせ、わたしは淫売だよッ」
 略
「へえ、おまえ淫売だって。インバイって、いったいどんなことをするんだい」
「ヘン、そんなこと知らないのか。淫売てのはね」
 略
「そりゃね、インをバイするのさ、ハハハ」
「アッハッハ」


 娼婦と恋に落ちてその中で苦悩する切ないお話「驟雨」、結核の入院記録である「漂う部屋」が特にお気に入り。この間読んだ高橋弘希氏の朝顔の日も結核のお話だったなぁ。肋骨を抜いて肺を圧迫するとか大量の喀血とか、とても恐ろしい。


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【読書感想文】 中島らも/とほほのほ 【1995年刊行】

 ここ数年間、中島らも氏のエッセイを読むのを禁じていた。理由は二つある。一つは「一冊読めば次々読んでしまうので、積ん読が減らなくなってしまう」であり、これはもう積ん読で部屋が大変なことになっている僕にとっては大問題だ。
 そしてもう一つは、「十代から二十代前半に読みまくりすぎて、どれを読んだか読んでないかがわからなくなってしまった」から。半分ほど読んでいて既視感を覚え、調べてみるともう既に読んでいたなんてことは、積ん読で部屋が大変なことになっている僕にとっては大問題だ。

 でも、まぁ……いいじゃないか。面白いものを我慢して読まないなんて馬鹿げてる。読みたいものを読みましょう。とのことで読んだ。

 面白すぎて仕事の時間以外ずっと読んでた。笑えるし、考えさせられるし、呆れるし、なるほどなと思う。氏の営業マン時代のこともちらほらと書かれていた。あとはプロレス、大阪、過去に会った人の話。

 他のエッセイや対談集も読みたくなってしまった。だから積ん読が減らないんだよなぁ。


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【読書感想文】 中原昌也/マリ&フィフィの虐殺ソングブック 【2000年刊行】

 面白い!

 オチも展開もなもへったくれもクソもない、下品でナンセンスな即興演奏のような掌編たち。

 こんな感じでいいんだよね。こんな感じの小説読んでくすりと笑って、さー明日も頑張るかと。

 

 なんのこっちゃよくわからんけどなんだか笑える。疑問なんか抱いちゃ駄目、深く考えちゃ駄目。もしかしたら深いところがあるのかもしれないが、そんなもの探さなくていい。ただ笑えばそれでいい。

 

 PS.コピペで有名なインテリジェント・ゴリラスーツってこの小説のネタだったのね。

 

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【読書感想文】 東野圭吾/マスカレード・ホテル 【2011年刊行】

 お……

 お、

 お――

 面白かった!


【概要】(Wikipedia引用)
 東京都内で3件の予告殺人事件が起きた。事件現場に残された不可解な暗号から、3つの事件は連続殺人事件として捜査される。警視庁の捜査本部は、数列の暗号が次の犯行現場を予告するものであると解読し、第4の殺人は高級ホテル「ホテル・コルテシア東京」で起こると推測する。

 数名の捜査員が、第4の事件を未然に防ぐ為フロントスタッフやベルボーイに扮してホテルに配置され、不慣れなホテルマンとしてのホテル業務に悪戦苦闘しつつ、不審な宿泊客を監視する事を強いられる。捜査一課の刑事・新田浩介は、英語ができる帰国子女であることから、同ホテルのフロントスタッフに扮することになり、新田の補佐・教育係には、優秀なフロントクラークの山岸尚美が任命された。

 立場も職業倫理も異なることから、潜入捜査が始まった段階では衝突の多い2人だったが、共にホテルマンとして、時には捜査員としての目線を互いに共有しながら、日常起こるホテル内での悲喜交々の出来事に対峙していくうち、二人の間には信頼と共闘意識が生まれる。そして、捜査本部がこれまでにない厳戒体制を敷いた、ある特別な1日が始まった。


【感想】
 こちらに休む暇を与えない展開、最初は反発しあっていた新田と山岸の関係性、ホテルにやってくる個性豊かな客たち、新田と独自の操作をする能勢のキャラクター、なにもかも文句の一つもないほどに素晴らしい。結構分厚いなと思いながら読み始めたが、なんのことはない、二日三日で一気に読み終えてしまった。

 続編が二作あるようで、早く読みたい。新田と山岸にまた会いたい。

【読書感想文】 高橋弘希/朝顔の日 【2015年刊行】

 二冊目にして芥川龍之介賞候補作。デビュー作は戦争文学の指の骨、三冊目のスイミングススクールは母親の心の動きを描いて、二冊目は開戦前後の工場作業員である主人公と闘病中の嫁の切ない交流を描いた。

 

 感想文で僕が何度も書いている「どうしようもなさ」が溢れまくっていてとてもいい。主人公にはどうすることもできない。それを冷静に淡々と描写するのもとてもいい。

 愛する相手との会話が禁止されるなんて、考えただけでも苦しい。

 

 そしてやはり、さすが高橋弘希氏だなぁと唸らせる文章のきめ細やかさ。舞台の設定が設定なので、見慣れない言葉も出てくるが、雰囲気がよく出ている。

 

 高橋弘希氏は常に新たなものを描く。経験していようがしていまいが、自分と違おうが違うまいが、その時代を知ってようが知らまいが関係ない。徹底的に調べ上げ、それを紡ぐ。職人技だ。

 

 だからこそ、芥川龍之介賞を獲っていただきたかったが……。それはそれ、これはこれ。

 

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【読書感想文】 茨木のり子/詩のこころを読む 【1979年刊行】

 読むのにかなり時間がかかってしまった。というのも、そもそもやっぱり僕には詩が理解できないということであるし、茨木のり子氏の解説もさっぱり理解できないし、気に入った詩は何度も何度も繰り返して読んでしまうから。

 

 この三点の理由。

 

 詩はさっぱり理解できないし解説もなに言ってるか理解できないけれど、胸にすっと入ってきてとても心地の良い気分にさせてくれる詩は存在する。数は多くはない。ここに載っている詩のほとんどが理解不能だった。しかし読んでいるとたまにそういう、幸せな気持ちになる詩がある。

 そういう詩もあるんだな、と思えたことが一番の収穫だった。

 そういう詩は何度繰り返し読んでも飽きない。まるで絵のようだと思った。

 

 というか、詩ってそういうものなんだろうな。「考えるんじゃなく、感じろ!」という。

 敬愛する高橋源一郎氏の作品を読んだ時のような、「なんのこっちゃようわからんが、心地いい」と思えたらそれで十分なのかもしれない。

 

 

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